(幻冬舎新書)
さまざまなテレビ番組や雑誌などでもお馴染みの購買/調達コンサルタント・坂口孝則。いま、大手中小問わず企業から引く手あまたのコスト削減のプロが、アイドル、牛丼から最新の企業動向まで、硬軟問わずあの「儲けのカラクリ」を暴露! そこにはある共通点が見えてくる!?
寝ている間に給料以上を稼いだよ
寝ている間に、自分の銀行口座に35万円が振り込まれる経験をした人は、それほど多くないだろう。
ある金曜日の17時、電話がかかってきた。電話の主は、私の著作『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)の担当編集者だった。「5,000部の増刷が決まりました」と教えてくれた。「ほんとかよ」と思った。
増刷とは、全国の書店にある在庫が切れそうなときに、追加で印刷することだ。5,000部の増刷で、印税率は10%だから、700円×10%×5,000部=35万円が、何も働いていない私の口座に振り込まれることになった。
これは現在の話ではない。2008年初頭の話だ。当時、私の給料は手取りで20万円以下だった。毎日10時間ほど働いて得る20万円と、寝ているうちに振り込まれる印税を比較すると、頭がくらくらしてきた。しかも、その増刷連絡は、それ以降何回も続いた。そのあと、私のようなどこの馬の骨かもわからない人間の「話を聞きたい」と講演オファーがあった。謝礼は「1時間20万円でよいか」という。ビビって断った。ゴールデンタイムでの出演依頼もあった。あなたのDVDをつくりたいというオファーもあった。それらもすべてお断りし、雑誌の執筆だけを引き受けた。1000字で1万円だった。執筆だけなら、土日を費やせばよかった。
その頃私は、会社員生活をやめ、独立・起業することを考えていた。そんなときに出版の話をいただいたのだった。この経験は、私を独立の方向に動かすに十分だった。もしかすると、自分は印税だけで食っていけるのではないか、と誤解してしまったのも、この頃だった。バカ野郎だった。
サラリーマンの悲哀、起業の悲惨
現在、日本の給与所得者の給与水準が低下している。国税庁「2010年度民間給与実態統計調査」によると、約10年前の01年に454万円だった給与所得者の平均年収が、10年には412万円となった。経済が右肩上がりで給与が上がり続ければ、会社員であることに不満をもつ層は少ない。ただ、給与が下がり続けていれば、自らの生き方に疑問をもつことも多い。
働けど働けど給料は上がらない。しかもリストラの危険さえある。なにより会社勤めは窮屈だ。そんな理由によって、独立・起業を望むサラリーマンは多い。しかし、会社組織に依存せず自ら稼ぐことの厳しさも、あらかじめ知っておいたほうがいい。このサイトの読者がどのような職業に就いているのかは知らない。また、読者のうち独立・起業を志す人の希望業種もわからない。
ただ、代表的な業種を見てみよう。開業企業数を全企業数で割った「開業率」と、廃業企業数を全企業数で割った「廃業率」だ(総務省「経済センサス―基礎調査 2006~2009年、企業単位、年平均」による)。
・飲食店、宿泊業 :開業率3.7%、廃業率8.3%
・小売業 :開業率1.7%、廃業率6.8%
・サービス業 :開業率2.2%、廃業率5.2%