深刻化する「8050問題」に国も重い腰をあげる?
前掲の調査のうち、最も切実なのは(3)の高年未婚者(45-54歳)だろう。
親も子も年を取り、子どもは職探しをする気力も体力も失せる。親も病気や要介護のリスクが高まり、今さら子どもを追い出すのは、いろいろな意味で不安だ。近い将来、親の介護や死亡などによって、一家が孤立、経済的に困窮する可能性が高いことが予想される。まさに「8050問題」(80代の親と50代の引きこもりの子ども)だ。
この問題については、以前から家族や支援団体等から早急に実態を把握するよう求められていたが、国は引きこもり支援を若年層の問題と捉え、この年代に関してはほぼ放置だった。それがようやく重い腰をあげ、内閣府では2018年度にこれまで調査対象を39歳までに限定していたものを、新たに40~59歳の人がいる全国5000世帯を抽出し、調査員が訪問調査する案を検討。全国の推計人数も算出するという。
また厚生労働省では引きこもり対策として、15年4月から始まった「生活困窮者自立支援制度(※)」に基づき、各都道府県など393の自治体(17年度時点)が、「就労準備支援事業」を実施している。
18年度からは、さらに対策を強化し、担当者が個別訪問し、自治体による就労体験などへの参加を促す取り組みを始めたという。
長年、就労どころか社会とかかわらずに生活してきた人にとって自立は困難を極める。社会福祉の制度をフルに活用するしか道はない。
※生活困窮者自立支援法に基づき、生活保護受給前のセーフティーネットとして、個々の状況に応じた支援計画を作成し生活の安定や就労支援をワンストップで行う制度。
<厚生労働省>生活困窮者自立支援制度
判断能力の低下に備えて高齢期の親も財産管理の早めの対策を
一方、高齢期の親も、万が一の場合の財産管理の方法を検討しておくことをお勧めする。
たとえば、高齢で認知症や介護の不安を抱えている親にとって、自分の判断能力が低下した場合、同居している無収入の未婚の子に財産をすべて任せるのは不安だという人もいるだろう。もしも後先考えずに使ってしまったら、本当に共倒れである。
このようなケースでは、親が事前に「任意後見制度」を活用し、任意後見人として信頼の置ける第三者を指定しておく。将来、親の判断能力が低下した場合、親自身の財産管理を任せるとともに、社会生活に不安がある子どものために成年後見人を選任してもらうことも視野に入れておきたい。
また任意後見制度は、本人の生存中にのみ機能するものだ。将来の相続に備えて「民事信託」を活用し、子どもに定期的に生活費を渡してもらうなどの方法もある。
今や個人資産の約7割は60歳以上が保有している。意思決定能力に応じて適切に財産管理を行うことが求められているのだ。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)