先日、テレビを観ていると、米ニューヨーク州で8年前に失業して実家に戻った30歳の息子に対し、自立のため家から出て行くよう求めた両親が、息子に拒否された結果、強硬手段として裁判所に訴え出たというニュースが放映されていた。両親の主張が認められ、裁判所から、実家の立ち退き命令を下された息子は「上訴する」意向だという。
どちらかといえば、子どもが成人後も親と同居することに寛容的な日本では、なかなかお目にかかれないような裁判だ。しかし正直なところ、日本でも親がこれくらい“腹をくくって”子どもの自立を促すようにしないと「共倒れ」が危ぶまれるご家庭が増えてくるかもしれない。
親と同居でも、それぞれに収入があれば生活水準は高くなる
冒頭のニュースのように、たとえば子どもが失業や病気、離婚などの事情から、実家に戻ってくるというケースは多々ある。また、親が病気や要介護状態になるなど、親の事情によって子どもが同居するというケースもあるだろう。
両者とも、親子それぞれになんらかの収入があるならば、別々に暮らすよりも生活費は割安。お金を貯める余裕も出てくる。家事も分担すればラクだし、病気やケガのときなど、心細い思いをすることもない。
大変なのは、収入源が1人に集中してしまう場合だ。とくに働き盛りであるはずの子どもが失業し、親の年金収入に頼らざるを得ない状況に陥ると、親子で経済的に困窮し、共倒れになりかねない。
1999年に山田昌弘教授が著書『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)で著した「パラサイト・シングル」は、学卒後も親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している未婚者のこと。その当時は、家事や身の回りのことはすべて親任せ。家賃も食費も入れず、給料はすべて自分のためだけに使うといった気ままな独身貴族的な意味合いで使われていたのではなかったか。
20年以上が経過した今、当時25歳だった親と同居の未婚者の約3分の1が未婚のまま50歳を迎えているという。
親子で共倒れになるリスクのある家庭は減少傾向?
総務省統計研究研修所が行っている調査研究によると「親と同居の未婚者」のうち、「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある者」は、以前に比べて減少傾向にある。ただ、この調査で興味深いのは、各年齢層における構成に違いがある点だ。