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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

80代の親・50代で働く意思のない子の同居、社会問題化…共倒れする同居世帯

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

 なお、ここでの「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある者」とは、(1)完全失業者、(2)無就業・無就学者、(3)臨時雇・日雇者の3つと定義される。

 親と同居の未婚者のうち、「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある者」を(1)20-34歳、(2)35-44歳、(3)45-54歳の3つの年齢層に分けて就業状況等の内訳の推移を表したものが図表1~3である。それぞれポイントは以下の通り。

(1)20-34歳

・親と同居の若年未婚者(20-34歳)のうち「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある者」の数は、ピークであった269万人(2005年)から134万人(16年)と11年間で半数以下に減少したものの、いまだ100万人を大幅に超えている。
・この年齢層は、臨時雇・日雇者>完全失業者>無就業・無就学者の順に割合が多く、「非正規雇用」が問題点といえる。

80代の親・50代で働く意思のない子の同居、社会問題化…共倒れする同居世帯の画像1
80代の親・50代で働く意思のない子の同居、社会問題化…共倒れする同居世帯の画像2
80代の親・50代で働く意思のない子の同居、社会問題化…共倒れする同居世帯の画像3

(2)35-44歳

・親と同居の壮年未婚者(35-44歳)のうち「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある者」の数は、ピークであった75万人(10年)から52万人(16年)と6年間で約3分の2に減少。
・この年齢層は、完全失業者>無就業・無就学者>臨時雇・日雇者の順に割合が高く、「失業」が問題点といえる。

(3)45-54歳

・親と同居の高年未婚者(45-54歳)のうち「基礎的生活条件を親に依存している可能性のある者」の数は、31万人(2016年)に上る。
・無就業・無就学者>完全失業者>臨時雇・日雇者の順に割合が高く、「無就業・無就学」が問題点といえる。

 なお、「無就業・無就学」とは、一般的に就業、通学および家事のいずれもしていない人のこと。就業していない点は「完全失業者」も同じだが、仕事を探しているかどうかという点が異なる。

 これらの結果をみる限り、収入がなく生活を親に依存せざるを得ない状況に関して、(1)の若年未婚者層は非正規雇用など低所得のため経済的に自立できない、(2)の壮年未婚者層は仕事を探しているけれども仕事がない、(3)の高年未婚者層は、そもそも働こうという意思・意欲がない、という事情が垣間見える。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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