次に挙げる1~5位までの業種を一瞥して、いったいなんのワースト順位か、わかるだろうか。ちなみに、( )内は各業種の回答率だ。
1位:外食(42.3)、2位:旅行運送(26.5)、3位:自動車販売(20.6)、4位:食品販売、5位:不動産(19.7)
実はこれ、「たばこの臭いで不快な思いをしたことがあるサービス業は?」を問われた、男女1500名(20歳以上の一般生活者)から寄せられた回答の集計結果である。
不名誉な1位に選出された外食産業での体験とは、たとえば「せっかくの外食で禁煙席に座ったのに、店員がたばこ臭かった」というような場面だ。
2位の旅行運送(鉄道・バス・タクシーなど)の場合でも、ようやく拾ったタクシー車内が明らかに直前まで運転手が喫煙していた残り香が充満していて思わずキャンセル……。そんな体験の持ち主も少なくないだろう。
衣服の付着臭で好感度減の残念店
3次喫煙(third-hand smoke)という言葉をご存じだろうか。かりに「分煙」や「禁煙」が行き届いている店でも、(従業員など)喫煙者の衣類に残るたばこ臭や、喫煙後の息から出る見えない煙(ガス状成分)などを吸入すれば、これが3次喫煙となる。
そんな不快感の実態調査を実施したのは、24時間電話健康相談や企業・団体向けの「集団禁煙プログラム」開発でも知られるティーペックだ。
冒頭で紹介した調査結果も、同社の言い方を借りて裏返せば「タバコでモッタイナイことしている業種のワースト1位は外食産業」となる。
この「喫煙に関する意識調査」では、「商品購入またはサービスを受ける際に、提供者からたばこの臭いなどを感じたことがありますか?」という接近遭遇時の体験も聞いているが、約6割(59.3%)の回答者が「ある」、そのうち約7割(68.4%)が「不快」と感じている。
さらに「不快」と感じた回答者に「たばこの臭いが接客者への好感度に影響しましたか?」を問うと、好感度が下がった(=悪くなった/ 非常に悪くなった)という層が60.3%を占めた。
しかも接客者のたばこ臭で半数超(55.9%)の回答者が「購買意欲が下がった(=大きく下がった/ やや下がった)」としている点からも、該当店の残念(モッタイナイ)度がわかる。
もはや喫煙層は5人に1人以下のマイノリティ
参考までに今回の回答者1500名の内訳を記しておくと、喫煙中(19.5%)、喫煙経験なし(55.4%)、禁煙1年未満(2.1%)、禁煙1年以上20年未満(14.1%)、禁煙20年以上(8.9%)となる。
各数値を注視して気付いたのが、筆頭者(喫煙中)の比率が、昨年5月実施の日本たばこ産業(JT)調査の全国成人喫煙率(19.3%)や、OECD調べによる日本の喫煙者割合(19.6%:2014年)とほぼ同じだという点だ。
19.5±0.2前後ということは、日本人の場合、もはや喫煙層が5人に1人の割合をも切った次第であり、もはや5人に4人超への「配慮」で物事を決めても良さそうなものだ。
加熱より過熱気味な<永田町>
懸案の受動喫煙防止対策強化を盛り込んだ健康増進法改正案は先日、今国会のでの成立が見送りになった。
争点は飲食店の対応、とりわけ「規制対象外」を30平方メートル以下のバーやスナックとする(厚労省案)か、客室面積100平方メートル以下とする(自民党案)か。
ところが後者とした場合、東京都の飲食店の約9割が該当するという調査もあり、しかも恒久処置を謳われては「冗談じゃない!」と厚労省関係者が憤るのも無理はない。
一般社団法人「日本たばこ協会」が公表している「たばこの販売実績データ」(1990~2016年)によれば、販売数量こそピーク(1996年)比で2016年実績は「52%減」まで落ち込んだそうだが、販売代金のほうはピーク(1999年)比で2016年実績が「15%減」と緩やかな推移にとどまっている。
その理由はもちろん尋常でない値上げ(販売価格)が反映されてのことだが、受動喫煙防止法の議論が自民党内で空転(見送り)する情勢下、当のたばこ会社側は新たな「加熱式たばこ」需要の市場拡大へ戦略を転換している。
サービス業では衣服から臭い立つ従来式たばこの残り香が敬遠され、たばこ業界自体が「加熱式」へと商機を見いだしている。
ところが、「永田町の煙族」だけは、いつまでも燻っては、2年間を見込んだ五輪に向けての周知期間さえ割る顛末となってしまった。
例の「お・も・て・な・し」も、羊頭狗肉になるならば、そろそろ看板を下ろしたほうがいい。
(文=ヘルスプレス編集部)