突然ですが、あなたには行きつけの居酒屋はありますか? もしあるとしたら、なぜ、その居酒屋に通うのですか? 店員の接客、料理の質、お酒の種類の多さ、店内の雰囲気、アクセスの良さなど、人によってその基準は様々でしょう。
『なぜ、あの店は生ビールが120円でも儲かるのか?』(鬼頭誠司/著、ダイヤモンド社/刊)は、1000店舗を誇るハンバーグ・チェーンの経営者を父に持つ中川あすみという女子大生が主人公のストーリー風ビジネス書です。
父、昌一郎のもとには営業不振の飲食店から連日のように相談が舞いこむものの、多忙なため相談に応じられずにいました。そんな折、娘のあすみは無事、大学進学を決めます。
実は幼いころから父の経営する店をたびたび訪れていたあすみは、父の跡を継いで経営者になることを夢見るようになっていました。そして、あすみが大学入学に際して、父に自分の意思を伝えたところ「4年間かけての入社試験」を課してから結論を出すと返されます。その入社試験とは、営業不振に陥った飲食店に、父の代わりにアルバイトとして乗りこみ、ひとつひとつ経営を立て直していくというもの。
本書では、「原価と人件費を下げる方法」「新規オープンを成功させる方法」など計6つのテーマを、あすみの飲食店コンサルタントとしての成長に重ねながら解説しています。
あすみが初めて「再建」を手がけることになったのは、オープンして1年ほど経つものの、いまだに売上目標を達成できずにいるという居酒屋でした。そして父から「月商をアップさせる」ことをミッションとして与えられるところから物語はスタートします。
では、あすみはどのようにして居酒屋の売上を伸ばしていったのでしょうか。
■雰囲気の悪い店内…あすみがやったことは?
多くのお客は、お店や店員の雰囲気から「このお店にまた来るかどうか」を判断するもの。あすみがお客として初めてこのお店を訪れたとき、店先にはビールケースが積み上げられ、客席のテーブルは油でテカり、注文時には店員が必要以上に声をはりあげていました。あすみはそんな様子を見て、頭を抱えてしまいます。
少しでも雰囲気の良いお店にするべく、あすみは「良い組織風土」づくりに着手。組織風土は従業員のちょっとした習慣によってつくられていくものということで、掃除や接客などの改善案を店長に提出します。
ほとんどのスタッフは賛成し、それぞれ掃除のチェックリストを作成したり「いらっしゃいませ」の「ら」を強く上げるという接客トレーニングをするなど、日々の習慣の改善を徹底。お店の雰囲気は日に日に良くなってきます。ところが、その様子を横目で見ながら、なかなか輪に入ろうとしないスタッフがいました。この居酒屋で最も古株のスタッフ2人で、ついには「お店をやめる」とまで言い出します。
窮地に追い込まれたあすみは、父から「違う考え方の人間を1つの方向に向けることが出来るからこそリーダーなんだ」と言われ、店長同席のもと2人と話し合いの場をもうけます。その結果、あすみは2人と和解。「おすすめメニュー」の確立を始め、お店の再建が本格的にはじまります。
■実は居酒屋にとって重要な「おすすめメニュー」
どのお店にも「今日のおすすめ」や「おすすめメニュー」があるものです。ところが、あすみが働いているお店にはそれがありませんでした。
スタッフたちのモチベーションが高まり、どんどんお店が改善される中で、店長がある提案をします。それが「選択食数分析」という手法を使って、自分たちのお店のイチオシメニューを打ち出そうというものでした。