部下は上司を見て仕事をして、ダラダラと仕事をしながら「自分は仕事をしていますよ」というアピールをしているにすぎません。それなのに「日本人は働き蜂だ」と言われていることに矛盾を感じます。
そういったところを根本的に変えていくため、政府や企業のリーダーは、この日本の悪しき文化を変えると宣言してほしいのです。拙著で登場しているハピネス企業のように、社員も会社も双方がハピネスになる方法はあります。労使は対立するものであるという古い考えを捨て、新しい働き方を追求してほしいですね。
ハピネス企業には上下関係がなく、社長がとても謙虚という特徴があります。社員を大事にしているから会社が成長しているという意識を社長が持っているからです。会社とは何か、社員とは何かという意識改革こそ、今の日本に必要な議論ではないでしょうか。
仕事で成功する秘訣は、午後5時に帰ること
–まさにおっしゃる通りですね。私が以前取材させていただいた会社に、年間売り上げ数百億円という外資系会社がありました。その会社の最高経営責任者(CEO)はアメリカ人で、敬虔なモルモン教徒でした。私が「仕事で成功する秘訣は何ですか?」と質問したところ、彼から意外な言葉が返ってきました。「夕方5時に仕事を終えることです」というのです。彼はモルモン教の教えに忠実で、夕方早くに仕事を終え、アフター5は家族とともに過ごすことを日課としていました。夕方5時以降は仕事をしないと決めているから、仕事が効率的になり無駄がなくなると。そして「日本人が夕方からダラダラと残業しているのが理解できない」と言っていました。日本人は家族を大事にする人たちだと思ったが、仕事観は歪んでいると指摘しています。
阿部 その指摘は正しいですね。私は先日、福井県に取材に行ってきました。福井県は仕事と生活の両立が成功している県として有名なのですが、実際に取材してみてその秘密がわかりました。
福井県では共働き家庭が多く、「女性が働くのは普通」という感覚があります。また二世帯住宅が多く、子供の世話をおじいちゃんおばあちゃんがみるという文化があります。地域や家族が応援する文化があるからこそ、「仕事と生活の両立」が成り立つのだと実感しました。
しかし、日本の多くの地域が核家族化しているという現実もあります。日本人の働き方を変えるには、日本にそもそもあった「地域と家族が支えあう」という原点に回帰すること、時代や環境の変化でそれが難しい場合には、企業内保育などの「制度の充実」の2点が重要になると思います。