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早稲田は正論だけど平凡?“飛んでる”慶應は才能重視?

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西谷 浪人生の生徒たちは、自分の同級生が東大早稲田、慶應に進学して、自分は随分置いていかれた感じを抱いています。でも、僕自身の20代の経験から「遅れが後に役立つ」というポジティブな価値観を持って、彼らに伝えていましたし、文学など好きなことに打ち込んでいた経験が、生徒のモチベーションに良い影響を与えていたのだと思います。

 もう1つは、友人が29歳で死んだことです。彼の死には随分と喪失感を感じていましたし、何かに対する強くて漠然とした怒りもあった。そこで、当面の目標を超えることによって自分が将来やりたい夢に近づき、自分の技術やノウハウで乗り越えることで、人間的にも磨かれた生徒を多くつくることが、友人に対する供養になるんじゃないかと。当時はあまり意識していませんでしたが、今振り返ってみると、そういう情熱が生徒に伝わっていたのかもしれません。

 僕は、本当の意味で自分がやりたいことにつながっていないと、モチベーションが湧かないと考える古典的な人間です。自分のやりたいことが将来あって、その自分の将来の1つのステップとして大学受験があるので、生徒にも打たれ強くなってもらわないと困ると考えます。

ーー生徒に人気が出てくると、講師の間でやっかみやねたみはありませんか?

西谷 正直やっかみはたくさんありましたが、基本、忘れてしまいます。代ゼミの1年目、5人の講師で英語を担当したのですが、僕は早慶上智の最上位コースを担当したため、「出る杭は打たれる」で、ほかの講師が、生徒にマイナスの部分をいろいろ吹き込む。「テキストが厚すぎる」とか、西谷は「ICU出身と言っているが、本当は◯◯大だ」とか。それで、200人いた生徒が60〜70人に減っていきました。こっちは恐怖です。年契約の時給で働いていて、プロ野球の選手と同様に11月に翌年の契約を更新します。あまり人気がないと、クビになることもありますから。

 噂を信じた生徒もいましたが、残ってくれた生徒もいましたので、そこに対してはきちんとした授業をしようと思いました。精神的にはプレッシャーがかかりましたが、残ってくれた生徒に対して、それまで以上に集中しました。工夫して、朗らかに明るく、誰よりも良い授業をしようと心がけました。そしたら生徒が少しずつ戻ってきましたし、自分自身の技術も磨かれました。
 
 どの世界もそうですが、トップになるより、トップの座を維持していくことのほうが難しい。落ちそうになった時のひとつのポイントは、それをどう受け止め、「自分をどう変えていけるか」です。

●トップに立ち続ける秘訣

ーー西谷さんは代ゼミで教壇に立たれて以来、25年の間、常にトップの人気を保っておられますが、その秘訣は何でしょうか?

西谷 原点は情熱ですね。トップに立つための情熱を、いかに維持していけるか。誰でもトップに立つと慢心してしまう。まず、一番は体力ですね。今、週20コマの授業を持っていますが、入れようとすれば30は入ります。しかし、週30コマを受け持つと、その1年はよくても、その後、続かなくなります。それで空いた時間で体力をつくっています。以前はジムにも通いましたが、今はもっぱら代ゼミでエレベーターを使わず、階段の上り下りをしていて、1日平均20階分は上っていますね。1年続けると、エベレストを2回ほど登ることになります(笑)。ちょっとした工夫で楽しくなりますね。足腰も強くなって、授業にも役立ちます。階段を上る途中で考え事もできるし、年を取っても頭の回転が良くなる。

 それから、旅をしますね。仕事を極端に多くしないのもそのためで、ある程度休みが取れるので、前もって予定を決めて、1年に5〜6回は海外へ行きます。違う空気を吸ってリフレッシュするのは、教えるためにも役立ちます。また、本を書いて自分の体験を振り返る。本のタイトルにもなった「dreamtime」というのはそういうことで、生活をして、旅をして、記録に残す。生活を異なる視点から見ると、活性化します。

 特に書くことは大切ですね。書かないと、なんとなく日々の生活が過ぎ去ってしまう。僕の場合、2〜3年に1冊のペースで書くことで、書きながら頭を整理するので、新しい情報が入りやすくなります。

ーーそんな西谷さんが、このたび『dreamtime〜』を上梓されたきっかけはなんでしょうか?

BusinessJournal編集部

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