安倍内閣は「一億総活躍」を掲げ、高齢者の労働参加とともに女性の労働力参加を促進しようとしている。世間でも企業が女性を幹部に登用することが望ましいことだという認識が広まり、まだ少ないとはいえ、女性の役員や管理職は増加する傾向にある。
役員、管理職の女性比率に対する「目標値」を定める企業もある。数値目標までつくると、適材適所でかつフェアな人事ができるかという心配も出てくるが、世間に意気込みを見せようということなのだろう。また、当面は目標でもつくらないと、女性の登用がなかなか進まないという現実もある。
女性の昇進に関していわゆる「ガラスの天井」(見えにくいけれども、越えられない上限の例え)がまだ多くの組織で残っていることは事実だし、女性が家庭で果たすことを期待される役割と、組織での働き方が両立しにくいという問題も多く残っている。こうした制約のために、有能な女性の能力が生かされないとすると、組織の利益や目的にとって、ひいては社会全体にとっても残念なことだし、もちろんその女性にとってフェアでないことも大問題だ。
他方、世間の趨勢(すうせい)とその理念は以上の通りなのだが、最近、「不出来な女性上司とどう接していいのかわからない」「“女性枠”で下駄を履いた女性の昇進がアンフェアで腹が立つ(我慢できない!)」といった相談や愚痴を、男性ビジネスパーソンからしばしば聞くようになった。
この際、「不当だと思う女性の昇進(逆男女差別)」及び「(実力不足の)女性上司との付き合い方」について、あらかじめ整理しておくことが有益なのではないか。
女性上司との接し方
問題としての緊急性が高いのは、女性上司との接し方のほうだろう。
まず、自分が「上司として出来が悪いこと」について腹を立てているのか、「上司が女性であること」に違和感を覚えているのかを、はっきり分けて考えるべきだ。組織で働くビジネスパーソンであれば、「不出来な上司の下で働く」境遇は、比較的ありふれた不運だ。被害者の立場になることもあれば、将来、自分が加害者になることもある。
この場合に、「あいつ(上司)は女だから……」と考えていることを表面化させると、それは自分の負け(=組織人として大きな失敗)だというのが、現在の会社における「ゲームのルール」なのだ。古い表現で恐縮だが、「それを言ってはおしまい」なのだ。