そして、このゲームに適応する早道は、「自分はビジネスでかかわる相手が男性であっても、女性であっても、無関係だと考えることができる人間だ」と自分に思い込ませることだ。
人は簡単には偏見から自由になることができない生き物だ。ビジネスの世界に根強く残っている過去の男尊女卑的価値観の名残もあって、女性の下で働くこと自体が残念で不愉快だという気持ちを持つ男性がいるのは仕方がない。また、上司が「おかしい」と思う場合に、その原因を彼女が女性であることの特質に関連づけて理解しようとする気持ちが働くかも知れない。
そして、現実問題として、男性と女性は優劣は別として、傾向として異なる面は多々ある。しかし、その点を直接問題にするのではなく、性別関係なしの「個人」として、仕事の文脈で人間を評価することが求められている。
不満は、「仕事のやり方」のみに向けるべきであり、相手の人格や能力に向けるべきではない。この原則は、不出来な男性上司に相対する場合にも当てはまるのだが、まだ残る自身の女性に対する偏見を抑圧しながら不満の解決・軽減を図ろうとしているのだから、特に女性上司に対するに当たっては重要な行動指針だ。
戦う方法
それでも戦って排斥すべき相手だと思うなら、次の段階は、性別の問題を超えた上司と部下の対立の問題になる。「どうしても、やる」というなら、次の4点について考えてからにしよう。
(1)自分が起こそうとする戦いは「純粋に組織の利益のため」といえるか?
(2)戦って勝てるだけの材料(仕事上の不具合の具体的「記録」など)があるか?
(3)戦って不首尾だった場合、自分は転職できるか?
(4)発想を変えて、上司にサービスするほうが「得」ではないか?
(1)から(3)までがYesで、(4)がNoなら止めはしない。存分に戦われるがいい!
補足するなら、組織というものは、上司に対する批判・反逆に対して大変狭量だ。自分に正義と根拠が十分あっても、上司と戦ったこと自体で「喧嘩両成敗」とされたり、人物評価が下がったりする。退路としての「転職」が可能であるとの自信は、上司と表立って対立する以上不可欠だ。
また、能力が乏しい「不出来な上司」というものは、発想を変えて、サービスの提供相手として眺めると絶好の「お客様」だ。「同じ組織の仲間」だと思うから腹が立つのであって、自分の仕事の「お客様」だと思えば案外腹が立たない場合が少なくない。仕事上のトラブルや不出来・不具合を「お客様のニーズ」だと捉えると、不出来な上司はいい相手だ。