■キャッチボールで関係改善
――なるほど。たしかに最初のボタンをかけ違えたまま、いくら色々な施策を講じたところで効果は薄いでしょうね。他にはどのようなケースがありましたか。
道幸: 従業員数が40名ほどの地方企業で、事務所のなかでテニスボールを使ってキャッチボールをするという研修を行なったことがあります。
この会社は地方ということもあり、皆、車通勤。なので、基本的に飲みニケーションはできない会社でした。そこで、メンバー間のラフなコミュニケーションを促すためのきっかけとして、キャッチボールを勧めたんです。
やったことは極めてシンプルです。ボールを持った人が、誰かに向ってテニスボールを投げる。そして、ただ投げるだけじゃなく、投げる相手に向かって普段から思っていること……良いことも悪いことも含めて伝えるようにする。
そしてボールを受け取る側は、言われたことを、その場で承認する。これらのルールを設けた上でキャッチボールをし合ってもらったんです。
すると、どんなコミュニケーションが起きたか。平社員が社長に向かって、「もっとこういうふうにしてほしい」と、日頃不満に思っていたようなことをサラッと伝えたりする。ボールを投げながらですから、それを見ている周囲の人も社長本人も和やかに、そのことを受け止められるんです。
たったこれだけのことですが、15分ほど続けるだけで、だいぶ壁はなくなり、メンバーの帰属意識も高まりました。
――そのような研修を積み重ね、クロスコミュニケーションが実現した暁には、組織としてどのような変化があらわれるのですか。
道幸: てきめんに業績がアップします。
――業績アップ以外の副産物はありますか。
道幸: これはやや主観的な話になりますが、クロスコミュニケーションができている組織では、仮に退職者が出ても、「辞めたあとで悪口を言われる」みたなことがなくなることが多いように感じます。
つまり、クロスコミュニケーションがとれるようになって対話が進むなかで、どちらが良い悪いではなく、メンバー同士の立場の違いが鮮明になる。
その結果、「これ以上、歩み寄るのは、互いにとってメリットも少ないから、私は組織を離れることにします」というメンバーも出てくる。
でも、それはいわゆるケンカ別れとは全く次元が異なります。辞めたあとにネガティブなことを言われずにすむというわけです。
――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。
道幸: もし、この記事がきっかけで本書を手にとっていただけたなら、5回、10回と繰り返し読んでいただきたいですね。
私自身、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』は500回以上読み、いまでは内容を暗唱できるほどです。なので、私の本を気に入っていただけたなら、繰り返し読んで、そのたびに得られるであろう気づきを味わっていただきたいです。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。