新型コロナウイルス禍で公開が延期になっていた、長澤まさみ主演映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』が7月23日に公開される。こちらは、興収29.7億円を記録したヒット作『コンフィデンスマンJP ロマンス編』に続く、フジテレビ系人気テレビドラマの映画化第2弾だ。
近年はドラマの映画化作品が増加傾向にあり、『今⽇から俺は!!劇場版』(7⽉17⽇公開)、『劇場版 ひみつ×戦⼠ ファントミラージュ! ~映画になってちょーだいします~』(7⽉23⽇公開)と、7⽉以降公開予定作にもゴロゴロしている。
また、公開日は未定(7月10日現在)だが、綾瀬はるか主演の『劇場版 奥様は、取り扱い注意』、乃木坂46の齋藤飛鳥、梅澤美波、山下美月、さらに浜辺美波も登場する『映像研には手を出すな!』(9月25日公開)も控えている。
同じテレビドラマの映画化といっても、いわゆる“月9作品”である『コンフィデンスマンJP』のようなメジャー作から、知る人ぞ知る深夜ドラマの劇場版まであるので、予算や公開規模はさまざまだ。また、最近は映画制作ありきで、その事前プロモーションも兼ねて、深夜に前日譚に当たるドラマを放送するケースも目立っている(コミックの原作モノに多い)。
170億超の“おばけヒット”の『レインボーブリッジを封鎖せよ!』
いずれにしても、テレビドラマの映画化というのは、オリジナル作品をプロモーションするより効率がよく、公開前にある程度の動員が見込めることから、昔から特に珍しいものではなかった。ドラマ放送時点で熱いファン層が生まれていれば、大バケする可能性も高い。
過去の大成功例を興行収入とともにいくつか挙げておきたい。
『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年/173.5億円)
『劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(2018年/93億円)
『ROOKIES -卒業-』(2009年/85.5億円)
『HERO』(2007年/81.5億円)
『THE LAST MESSAGE 海猿』(2010年/80.4億円)
『花より男子 ファイナル』(2008年/77.5億円)
……といった具合である。冒頭で興収29.7億円の『コンフィデンスマンJP ロマンス編』をヒット作としたが、これらのメガヒット作品に比べれば、小ヒットの部類だろう。
しかし、何事も過ぎたるは及ばざるが如し。当然、乱発しすぎるとなかにはコケてしまう作品もある。ここでは、テレビドラマの映画化作品のなかでも強烈な失敗例をいくつかピックアップしてみたい。
鈴木京香の勝負作『セカンドバージン』も劇場版は惨敗
NHKのドラマの映画化というのは珍しい。そんなレアケースの1本が見事にコケた。鈴木京香主演の『セカンドバージン』である。2010年10月よりNHK総合で22時台に放送された(BSハイビジョンでも18時台に放送)ドラマ版は、当初は苦戦を強いられたが、回を追うごとに視聴率が上がり、12月14日放送の最終回に最高視聴率(11.5%/ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。NHKのこの枠のドラマとしては、極めて反響が大きい作品だった。だが、その熱気は長続きしなかった。
2011年9月に、鈴木京香、長谷川博己、深田恭子らドラマと同じ出演者、同じスタッフによる映画版が公開されたが、本放送時の盛り上がりの再現ならずで、興収は4億2600万円にとどまった。
長渕剛のライフワーク『とんぼ』も無残に撃沈
長渕剛の人気絶頂だった1988年に放送されたテレビドラマ『とんぼ』(TBS系)は、平均視聴率18%のヒット作。同名主題歌も大ヒットした。長渕が演じたのは、反社会的勢力に属する主人公・小川英二。本人はこの役に相当入れ込んでいたといわれる。しかし、続編はすぐに制作されず、実現したのは約9年後の1997年のことだった。単発2時間ドラマ『英二ふたたび』として、TBSではなくなぜかフジテレビ系で放送されている。これは極めて珍しい形であり、いろいろと面倒なアレコレが背景にあったことが推測できる。
そして、それから2年後の1999年に、これまで同シリーズを手掛けてきた黒土三男の監督、脚本により『英二』というタイトルで劇場版が制作された。
作品に対する思い入れが強かった長渕は、演出について盟友だった黒土と確執を起こすほどにこの作品にのめり込んでいたといわれる。しかし、さすがにオリジナルからブランクが開きすぎた。時代の空気はすっかり変わってしまったのだろう。興収はわずか2.5億円と大惨敗に終わった。
『スシ王子!』は堂本光一にとって最初で最後の主演作?
KinKi Kidsの堂本光一の初主演映画『銀幕版 スシ王子! ~ニューヨークへ行く~』は、大コケ作品として語り草になっている。
この作品は、もともと堤幸彦監督による映画の企画としてスタートしたもので、あとからテレビ朝日の深夜の「金曜ナイトドラマ」枠でドラマ版の放送が決まったという経緯がある。
しかし、知名度の高い原作のないオリジナル作品で、“映画ありきのドラマ放送”のスタイルをとった場合、ドラマが当たらないと映画は単なる“不人気ドラマの映画化作品”という状況になる。そして、2007年に放送されたドラマ版『スシ王子! 』は、そのパターンにガッツリとハマってしまうのだ。
ドラマ版は、平均視聴率が7.5%と、その前に放送されていたオダギリジョー主演の『帰ってきた時効警察』(12.0%)から、大きく下回る。後番組の北川景子主演『モップガール』が平均10.2%と持ち直している点を考えても、映画版は最初から成功する可能性が低かったのである。
『銀幕版 スシ王子! ~ニューヨークへ行く~』は、ドラマ版終了の約半年後、2008年4月に公開されたものの、下馬評通りの結果となり興収は3.65億円。堂本光一は以後、映画に出演していない。
向井理主演! 歴史に残るスーパー大爆死作品『神の舌を持つ男』
2016年に放送された向井理主演のドラマ『神の舌を持つ男』(TBS系) も、『スシ王子! 』と同じような、映画化ありきのオリジナルのドラマだった。そして、こちらも堤幸彦監督による演出であり、同監督は「原案」としても名を連ねている。
平均視聴率は5.6%と危険水域に達した『神の舌を持つ男』だが、それでも映画版の製作が強行された。ただし、TBSは制作にかかわらなかった。
話題性を狙ってか、『RANMARU 神の舌を持つ男 酒蔵若旦那怪死事件の影に潜むテキサス男とボヘミアン女将、そして美人村医者を追い詰める謎のかごめかごめ老婆軍団と三賢者の村の呪いに2サスマニアwithミヤケンとゴッドタン、ベロンチョアドベンチャー! 略して…蘭丸は二度死ぬ。鬼灯デスロード編』なる長いタイトルが発表されるが、それ自体が大きな話題になることすらなかった。案の定、映画は大惨敗。興収は1億円……責任者のクビが飛ぶレベルの数字に終わったのである。