・再発防止対策
過去に起こった問題の原因を深堀りして、その問題と同じことが起こらないように対策すること。
・未然防止対策
過去のトラブル事例とその再発防止で実行した原因究明を参考にして、将来起こるかもしれないリスクを予想して対策を講じること。
(P126-127より引用)
「再発防止」は同じ問題(同じ事象で同じ原因)のトラブルに対して有効です。しかし、将来において、過去と同じ問題が起こる確率は極めて低いと言えます。同じ事象が必ずしも同じ原因によって起きるとは限らないからです。
冒頭に挙げた2016年の軽井沢スキーバス事故から30年ほど遡った1985年、死者25人負傷者8人を出した犀川スキーバス事故が起こりました。
この2件は同じバス事故ですが、原因は異なります。犀川スキーバス事故の再発防止策を徹底的に実施していても、軽井沢スキーバス事故は防げたかといえば、「NO」でしょう。原因が異なれば対策方法も違うのです。
しかし、この論理でいうならば、あらゆる再発防止対策は無効なのでは? という疑問が浮かぶでしょう。
結論をいえば、無効ではありません。再発防止対策の原因究明と対策の実行が十分に行われていることが、「未然防止」にとって極めて重要な意味を持ちます。
「未然防止」には、小さなリスクを発見し、改善を実行する日常的な訓練が必要です。
例えば「しょうゆ」と「ソース」は、その容器がほぼ同じ形で同じ色なので判別しにくく、取り違えてしまうことが起こりえます。 では、なぜ「しょうゆ」と「ソース」を取り違えたのか。その根本原因と対策を考えることが「再発防止」だとすれば、「未然防止」は「取り違い」というリスクを認識し、別の状況でも同じ「取り違い」が起こると想定して、具体的な将来のリスクに気付き、その対策を講じることだといえます。
日ごろから将来のリスクに対する意識を持ち続けることが、「未然防止」に役立つのです。
将来のリスクに気付くことは、コスト削減や業務改革の実現に必要不可欠。いつまでもトラブル対応に追われている状態では、働き方にも悪い影響しか出ません。
ここでは「再発防止」「未然防止」について取り上げましたが、「再発防止」の前のステップとなる「緊急対応」や、「未然防止」の先にある「チーム全員参加で未然防止対策の実行」、事例研究などもぜひ知っておきたい情報です。
本書の内容は知識としてとどめておくだけではなく、実践してその効果を体感しなくては意味がありません。
小さなトラブルがインターネット上で炎上騒ぎになり、取り返しのつかないことになることが多くなった今、将来のトラブルの芽を未然に摘み取ることは、円滑な業務進行と組織体制作りにつながります。
「事が起こってからでは遅い」――ここに未然防止の価値があるのです。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。