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ランダム性や間違いにあえて身を晒し、一定の脆さを受け入れることで、反脆弱性を得ることができるだろう。
■何に基づいて意思決定をするか?
未来に進むためには、絶えず意思決定が必要になる。そのとき何を指針にすべきだろうか。
著者は未来予測に対して激しく批判的だ。「予測の成績はいつも0点」とまで言い切る。
そして、一番大事なのはペイオフ(事象によって生じる利得や損失)であるという。
科学者や組織のトップはよく信頼水準と呼ばれるものを用いる。ある結果が信頼水準95%だと言われれば、聞いた側はなんとなく満足する。だが、「飛行機は信頼水準95%で安全だ」と言われたらどうか。「99%」と言われても安全とは言えないだろう。
実世界においてほとんどの場合、予測に基づいた確率で意思決定はされていない。着目しているのは事象の脆さと「反脆さ」から導いたペイオフだ。
たとえば、飛行機の搭乗前に乗客が危険物や武器を持っていないかをチェックする。それは乗客をテロリストだと思っているからではなく、私たちがテロに対して脆いからだ。原子炉の安全強化に巨額を投じるのも、事故に対して脆いからである。
もっと身近なところで言えば、天気の悪い日に傘を持っていくかどうかもペイオフで決めているはずだ。「濡れない」という利得と「手荷物を減らす」という利得を天秤にかけ、絶対に濡れたくなかったら降水確率30%でも傘を持っていく。
こうした意思決定のプロセスを自覚することは、ひとつの指針となるだろう。
本書は上下巻で800ページという大著。他にも本書では、あらゆる事象に内在する反脆弱性を抽出し、そこにある問題と本質を掘り下げ、様々な分野へ応用展開されていく形で議論が進む。そのどれもが知的刺激に溢れ、先の見えない未来を進む一助になるはずだ。
(ライター:大村 佑介)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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