「目の前の仕事をこなすのに精一杯で、将来のことを具体的に考えられない」
「同期の昇進や活躍ぶりに、正直、あせってしまう」
「仕事でなかなか芽が出ず、将来のキャリアに不安を感じる」
こういった悩みを抱える人は多い。そんな悩みを解消するのに必要なのが、自分のキャリアをどう築いていくかを考えることだ。
今いる会社で働き続けるにしろ、転職や独立を考えるにしろ、「キャリア戦略」は重要だ。
「この仕事は○○さんでないと」と頼られる人材になるキャリアを積んでおけば、会社でも重宝されるし、転職や独立にも有利だ。言い換えれば「いかに“自分という商品”の価値を上げるか」がキャリア戦略のキモである。
『「あなた」という商品を高く売る方法』(NHK出版刊)の著者、永井孝尚氏は、『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA/中経出版)で知られるマーケティング戦略アドバイザー。この本ではマーケティング理論を応用した、「自分という商品」の価値を上げる方法を指南している。
■「競争をしない競争戦略」こそ、キャリアデザインの基本
マーケティングと聞くと、宣伝や広告を思い浮かべてしまうが、それらはマーケティング戦略のごく一部だ。企業が売り出す商品やサービスの価値を高めてより多くの顧客に届ける方法を整理し、誰にでもできるようにまとめたもの。それがマーケティング戦略の本質だ。
この「企業が売り出す商品やサービス」を「あなたという商品」に置き換えれば、キャリア戦略にも応用できる。
大切なのは、マーケティングの基本である「競争しないことが最高の競争戦略である」という考え方だ。
たとえば、防犯・事故防止・接客のために使われる業務用ミラーの会社「コミー」は、従業員20名程度でありながら全国シェア8割を誇る。この「コミー」のように細分化したニーズに特化して、ブルーオーシャンを狙う。これが「競争をしない競争戦略」だ。
「あなたの代わりはいくらでもいる」状態では、評価は高まらない。狙うべきは「好きなことで、誰もやっていないこと」。次項ではそのポイントを見極めるために必要な「バリューポジション」について解説しよう。
■「バリュープロポジション」で自分の価値を俯瞰しよう
「バリュープロポジション」とは、「相手が求めていて、自分しか提供できない価値」のことを指す。「誰もやっていないこと」は、「自分しか提供できない価値」だ。これを明確にしていくことが自分の価値を高めるポイントになる。
「バリュープロポジション」をつくるには、4つの要素を考えていく。
1.どんな強みを生かして(自分の強み)
2.誰の(ターゲット)
3.どんな悩みに(ニーズ)
4.いかに応えるか(自分の仕事)
これを本書の著者、永井氏に当てはめると、次のようになる。
1.自分の強み → マーケティングの失敗経験+その後の知識+戦略策定
2.ターゲット → マーケティングを知らず、価格競争で疲弊する企業やビジネスパーソン
3.ニーズ → 価格勝負から価値勝負に進化したい
4.自分の仕事 → 経験に基づき、ブログやビジネス書を執筆
ここで多くの人が考えてしまうのが「本当の自分の強みってどれだろう?」ということだ。本書では、そんな「本物の自分の強み」の見極め方も紹介されている。
■「自分の強み」がわかる4つの質問
誰しも「自分の強み」だと自負しているものを持っているだろう。本書ではその「強み」を見極める方法として「4つのチェックリスト」が紹介されている。
次の4つの問いがすべて「YES」になるものが、「本物の自分の強み」だ。