「足で稼ぐ営業」を続けても成果が出ない。新規顧客を狙っても受付が突破できない。「数打ちゃ当たる」と電話をしても誰も話を聞いてくれない。
そんな悩みを抱えながら、体力と根性だけでノルマに立ち向かっている営業マンはそろそろスタイルを変えるべきなのかもしれない。もう少し違ったアプローチを仕掛ける思考法を身につけるべきだ。
『営業 野村證券伝説の営業マンの「仮説思考」とノウハウのすべて』(冨田和成著、クロスメディア・パブリッシング刊)は、頑張っているのに売れない営業マンほど読んだ方がいい一冊だ。
著者は『鬼束PDCA』(クロスメディア・パブリッシング刊)がベストセラーになった元・野村證券トップ営業マンであり、本書ではそのノウハウを余すところなく紹介している。
「仮説思考」で営業の勝ちパターンをつくる
著者は、自身の現役時代の営業スタイルを「仮説思考」に基づいた「仮説営業」だと述べている。
たとえば、著者は駆け出し営業マンの頃、飛び込みの第一声で「ご挨拶に伺いました」と言っても99%のケースで受付すら突破できずに苦労した。
そこで、自分が営業を掛けられる側だと仮定して、どんな言葉なら受付を突破できるか仮説ベースで考えていったのだ。
つまり問題に対して「ボトルネックはここだろう」と推論し、それを実証するために行動をしたのだ。仮説と検証を続け、著者は2つの「受付突破の勝ちパターン」を見つけている。
・自分と相手(経営者や担当者など)との関連性を感じてもらう
・提案と相手のニーズとの関連性を感じてもらう
受付が会社から課せられているのは「侵入者を排除する」という使命だ。それを逆手にとれば「押し売りに来ただけの営業(=侵入者)だと思われないようにすれば、受付を突破できるのでは?」という“仮説”が成り立つ。
たとえば、「○○の会でお会いしまして」「御社のお取引先の△△銀行さんの公募増資の件で」と、“相手との関連性”を示す言葉で切り込めば、受付も無碍な対応はしにくくなる。
また、「御社のIR情報を拝見し、□□に課題があると明言されておりましたので、その解決策の情報提供を」と言えば、“ニーズ”を示した上、受付の判断を超える案件なので、受付突破の可能性は高まるだろう。
このように「仮説ベース」で物事を考え、その仮説で成果が出るかどうかの検証を繰り返して「勝ちパターン」を増やせば、体力と根性だけに頼らなくて済むだろう。
「リスト」「ニーズ」を仮説思考から見抜く
本書では、「リスト選定」「ニーズの見極め」「見込み客管理」「ヒアリング」「プレゼン」「紹介」という、営業における各プロセスでの「仮説思考」の使い方と、「仮説」の具体的な導き出し方を紹介している。
たとえば、「リスト選定」なら、「新卒採用を10人以上している中小企業は、(新卒の入社が1年半先だと考えると)売上に自信がある会社に違いない」という仮説をもとに、有望な会社を見つけ出すことができるかもしれない。
また、業績や企業情報を見て「これは事業継承をしようとしているのかもしれない」「モチベーション管理が経営課題かもしれない」という仮説が導けるようになれば、「ニーズ」を絞り込んで、効率的な営業活動ができるようになる。
本書で紹介されるノウハウは実にロジカルで合理的な方法論だ。トライ&エラーを繰り返し、ひとつひとつものにしていけば、無駄に「足で稼ぐ営業」「場当たり的な営業」を続けるよりも、確実に成果が出せるようになるだろう。
(ライター/大村佑介)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。