本コラムでは、1回目において「モンスター社員」、2回目において「子ども社員」と、職場を崩壊へ向かわせる典型的な事象について述べてきた。これらに共通している要素がある。「寛容性」の欠如である。3回目となる今回は、職場の崩壊の背景にある、この点について述べていきたいと思う。
キレて暴れる中高年
駅員への暴言や暴行というニュースにたびたび触れる。仕事中であって無抵抗の人に対する一方的な暴言や暴行ということで、暗い気持ちになる。こうした暴力行為は、日本民営鉄道協会等の調査によると、若い人たちよりも中高年に多いという。
本来、社会常識やマナーの手本となるべき中高年が、最もキレて騒いで、暴れてしまっているわけだ。こうした実態を見ると、「最近の若者は……」などと言っていられない状況にあることがわかる。どうして、このようなことになってしまっているのだろうか。心理学において、「欲求不満-攻撃仮説」という理論がある。欲求不満が高まると攻撃行動が喚起されるというものである。言い換えれば、攻撃行動の背景にはなんらかの欲求不満が存在し、欲求不満が強いほど、攻撃行動が誘発されやすいとされる。
暴言・暴行の実態を見るに、中高年の心の中に「こんなはずじゃなかった」「自分は報われていない」という思いがくすぶっていることが関係していると考えられる。満員電車での通勤、仕事上の厳しいノルマ、不公平な評価、残業の多さ、職場での居心地の悪さ、上司との折り合いの悪さ、低い報酬、仕事上のミスによる上司からの叱責、顧客からのクレーム等々。これらはすべて、社会的ストレッサーである。
こうしたことが重なり、「なんで自分だけがこんな目に遭わなければならないのか」という思いが欲求不満を生じさせ、攻撃対象を探しているような状況になっている可能性は高い。“やり場のない怒り”という表現があるが、そのような怒りを抱えている場合、その“やり場”を常に探している状態ともいえるであろう。ゆえに、ちょっとしたきっかけで暴発してしまうのである。とはいっても、職場で暴発させるわけにはいかないので、じっと我慢し、ますますストレスを溜め込む。そんなところへ、駅で気に入らないことがあった場合など、つい自分でも驚くほど攻撃的になってしまうのだ。