その顧客と付き合って、「生涯でいくらの利益が生まれるか」がLTVです。これまで相当な利益をもたらしてくれた顧客も、今取引をやめてしまえば、今後LTVが上がっていくことはありません。むしろ、これからしばらくは利幅が下がるとしても、付き合いを継続したほうが、LTVは上昇していきます。
商売は「点ではなく線である」という表現も、聞いたことがあるのではないでしょうか。
今現在の顧客との関係は点でしかありません。点がつながって線になることをイメージしましょう。そうすると一時的に線が下を向いても、この先に再び上昇線が描かれることも、あり得ると考えられるのではないでしょうか。
したがって、その線は途切らせることなく、とりあえずはつないでおいて、その間に打つ手を考えるという選択は道理にかなっているのです。
前出の値切ってきた相手に対しては、妥協案をいくつか用意し、説得することに努めます。この際、あなたには一生懸命に顧客を維持したい姿勢を見せることが必要です。何が正しいかにこだわるよりも、あなたがどのくらいうまく演技できるかにこだわってみましょう。多少の値引きは仕方ないとしても、あるところで食い止めるようがんばってみます。
これは「さっと見切りをつける」のとは逆の「簡単に顧客をあきらめない」姿勢です。相手の思惑に振り回されたことは不愉快ですが、よりよい成果を導き出すための妥協ができたことは、褒められるべきことなのです。
相手の言動に腹が立ったとき
理不尽な値引き要求とは違うケースについて考えてみましょう。
商取引をしていると、「相手がルーズ」「約束を守ってくれない」「担当者と気が合わない」といった事態に直面することがあります。こうしたことは想定の範囲内として、大らかに対処したいところです。
しかし、顧客の行動があまりにも身勝手で、自分が耐えていればいいだけですまなくなることもあります。
たとえば最近、筆者の知り合いが「某大学の教授から、セミナーを開催する業者の紹介を依頼された」ときの話をしてくれました。その知り合いは業者を紹介したそうなのですが、まず教授は自分からは連絡せず、業者から連絡をしてくるよう知り合いに依頼し、その後連絡をしてきた業者を呼び出し、セミナーの開催を依頼し、追ってプログラムの案を送ると言ったまま、音信不通になってしまったそうなのです。そのため知り合いが教授に電話をすると、「わかっていますよ」「ちゃんとやるって言っているでしょう」と逆切れされたということです。しかし、その教授はその後、誰にもなんの連絡もしてこなかったそうです。