これは「紹介した人を無下に扱われ、自分の顔もつぶされた」というケースですが、その知り合いは、自分の会社がこの教授の大学と一緒にプロジェクトを行っている間柄にあるため、まともに言いたいことを伝えるわけにもいきません。したがって簡単に関係を終わりにせず、我慢して付き合っていく(=粘ってみる)ことが必要になるわけです。
ここで「どういうつもりですか」と苦情を言いに行きたくなったとしても、やはり間を置くようにします。先ほどの例でも述べましたが、感情が入ってしまっているときは、ともかく時間を空けるのが原則です。
私たちはこのような揉め事で喧嘩をするわけにはいきません。これは粘るときの鉄則でもあります。怒って感情を言葉や態度に表わすと、それで関係が終わってしまうと考えなくてはなりません。多くの場合、あとでとりつくろっても元の関係には戻れなくなってしまうのです。長く続いている取引や関係においても、一発で退場になるレッドカードがあることを忘れないようにしましょう。
取引を終わらせたいときでも
関係を終わらせるほうがよいと思える場合はどうでしょうか。付き合っていても、もうメリットはないと考えられるケースです。
この場合でも、自分から「関係を終わりにしたい」とか、「取引を終了したい」とは言わないようにします。自分からそう言い出してしまうと、以降、状況が変わったときに、関係を戻してほしいと頼めなくなるからです。
時間が経てば、自分を困らせていた担当者がいなくなることも、組織の幹部が変わり、方針がすっかり変わることもあるものです。そのため、断りたいときには、現在の自分たちでは、どうしても要望にこたえられないと相手に謝りながら、「それでもなんとかお付き合いを」と頼んでみます。そうすれば相手から断ってくれますから、いずれ関係を取り戻せる可能性が残ります。これは、ある意味「粘りのある」終わらせ方といえるでしょう。
気持ちのよくない出来事があっても、相手との付き合いを維持したときのメリットは大きいものです。できるだけ寛容な態度で、粘りのあるビジネスパーソンを目指したいものです。
(文=松崎久純/グローバル人材育成専門家、サイドマン経営代表)