「一生懸命稼いで得たお金を持っていかれてたまるか」と、会社の「節税対策」に苦心している経営者は多いだろう。しかし、もしそれらの節税策が逆に会社の首を絞めているとするならば、本末転倒だ。
■税金対策の9割は逆効果?
税理士の松波竜太氏が執筆した『その節税が会社を殺す』(すばる舎刊)によれば、結論から言って、世の「定説」「定番」といわれている節税のほぼすべてが「無駄、無意味」なのだという。無意味ならまだ良い。むしろ逆効果ということもある。
そして著者は、「節税以前にやることがある」と述べ、大事なのは「お金」であると指摘する。
そもそも会社は、売上が増えればお金が増えるというわけではなく、むしろ減ることが多い。「売上が増える」と「お金を集める」は別物であり、大事なのは「お金を集めること」だ。なぜなら、売上を増やすためにはお金が必要だからである。ビジネスなのだから、どんなことをするにしても、お金がかかる。
しかし、節税はお金を集めることを止めてしまう力を持っている。その理由は2つ。「節税が貴重な会社の現金をむしばむ」ということ、もう一つが「節税をすると銀行からお金を借りにくくなる」ということだ。
こうして経営は悪いスパイラルに入り込んでいく。順序は次の通りだ。
(1)節税する
(2)利益が減る。お金がなくなる
(3)銀行が貸してくれない
(4)投資ができない、取引先への支払いが遅れる、支払えない
(5)倒産
――『その節税が会社を殺す』p.22より引用
このスパイラルを断ち切り、良いスパイラルにするにはどうすべきなのだろうか。それは次のような手順を踏むことだ。
(1)しっかり手元資金を確保
(2)必要な投資が可能で経営にも余裕を持てる
(3)銀行が「低金利などの良い条件にしますから、借りてもらえませんか」と言ってくる
(4)売上がアップ。金利も下げられて利益アップ
(5)銀行は「もっと借りてください」と言い、さらに手元資金が厚くなる
――『その節税が会社を殺す』p.23より引用
お金があり、金払いが良いことの利点は、周囲からの評価がガラリと変わること。取引したいと思える会社はやはり金払いの良い会社である。逆にケチをすればするほど、取引ができなくなっていくようになりかねない。
■今すぐ見直すべき「節税のための節税」
もちろん、著者はすべての節税がNGとは言わないが、ほとんどの節税に対してメスをいれている。一体どんなものを見直すべきなのか?
節税の代表選手といえば「保険」だが、こちらは見直すべき節税だ。
保険料を支払ったときに経費を増やせるので、法人税が安くなるが、一定の契約期間を経て、満期や契約返戻金のピークの時期が来た時には、その満期保険金や解約返戻金に法人税がかかってしまう。そのため、保険は節税ではなく法人税支払いの先延ばしにすぎないと指摘する。
この時、「単純返戻率では80%だけど、税効果を考えた実質返戻率では100%を超える」というセールストークに乗せられがちだろう。