“くん“付けをやめようとしない年上部下
「年下上司・年上部下」という状況が近年多発するようになったある会社でのこと。どうもうまくいっていない職場が多いと人事部の担当者が頭を悩ませていた。年下上司から、年上部下の異動を強く要請してきているようなケースも少なくないらしい。
状況を聞いてみると、ちょっとしたことがきっかけで関係が相当にこじれているケースが多いようだ。たとえば、典型的なものとしては、年上部下が年下上司のことを“くん”付けで呼ぶというものなど。ちょっとしたこととはいっても、ようやく管理職になって権勢を振るいたい年下上司としては譲れない一線に違いない。
人事部としても、できる限り、ある人の元部下がその人の上司になるようなことがないよう配慮しているということだったが、同じ部門の中でのこと、どうしても斜め下の部下だった者が上司になるようなケースは発生してしまう。そうした場合、これまで“○○くん”と呼んでいたものをあえて変えようとはしないということがままあるようだ。
常識的な線からすれば、“課長”と呼んだり、せめて、“さん”付けで呼ぶべきであろう。しかし、元上位職者としては、存在感を誇示したいということもあるのであろう、「○○課長よりも俺のほうがベテランなんだぞ」と、そんなことは周囲は皆わかっていることのはずだが、ことさらに誇示したがるのだ。
頭をもたげる「長幼の序」の意識
この「年下上司・年上部下」という状況は、最近ではかなり一般化してきている状況ではあるが、かつてはかなり稀な状況であった。リーダーが最年長であり、ピラミッド型の年齢構成の組織が一般的であった。それが現在では、逆ピラミッド型に近づき、中高年層が多く、若年層が少なく、多くのメンバーがリーダーよりも年上という状況が多く見られるようになった。不慣れな状況ということもあるだろう、あるいは、儒教の影響ということもあるのだろう。「長幼の序」という考え方は尊いものではあるが、年齢とは別に、職位や役割が明確に決められている企業のような組織の中にあっては、不具合を生じさせる元凶ともなりかねない。
エン・ジャパン株式会社が行った調査によると、年下上司の下で働いたことがある人の6割が「仕事をしづらい」と回答していることがわかった(『ミドルの転職』ユーザーアンケート)。その理由としては、「人の使い方が下手」が65%でもっとも多く、次いで「知識・知見が少ない」と続いており、どうも上から目線の傾向が強く垣間見られる。「長幼の序」を履き違え、年長者のほうから、「こちらを敬え」とか、「敬われて当然」という意識を強く持ってしまう場合には当然ながら軋轢は生じがちとなる。