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山崎将志「AIとノー残業時代の働き方」

ある部署で完全に残業ゼロ達成の目前で、社員たちから抵抗が続出した意外な理由

文=山崎将志/ビジネスコンサルタント
ある部署で完全に残業ゼロ達成の目前で、社員たちから抵抗が続出した意外な理由の画像1「Gettyimages」より

 現在日本では長時間労働の排除、残業時間の削減が社会的な取り組みになっています。これを実現するには労働関連の法律や、会社の人事制度を変える必要性があります。しかし、個人でできることもたくさんあります。そこで今回は、国の法制度や会社の人事制度は現状のままであることを前提に、個人としてどうすべきかについて話を進めていきます。

 ところで、なぜ残業が発生してしまうのでしょうか。

 その理由を尋ねると、お客さんの要求が厳しい、他部署との連携がうまくいっていなくて戻りが発生してしまう、人手不足で一人当たりの仕事量が多いなど、皆さんいろいろな理由を挙げます。

 しかし、本音を探っていくと、結局のところは「残業代が欲しいから」というところに行きつくのではないかと思います。

 いきなり下世話な話で恐縮ですが、多くの人にとって、残業するのは経済的な理由です。仮に月に40時間、年間で480時間残業すれば、時給2000円としても年間でプラス96万円になります。これはかなりの金額ですね。皆さんのなかにも残業代を前提に家計を組んでいる人が多いと思いますし、また会社もある程度の残業代を支払うことを前提に給与システムを設計しているところが多いのが実態です。ですから、残業代がもらえないと生活の水準が下がるという点が、残業ゼロ社会実現への大きな障害になっているはずです。

 それにもかかわらず、ある日突然「残業は禁止です。全員毎日定時に帰るように」などと会社に決められたら、なんだか梯子を外された気持ちになるでしょう。会社が危機的な状況になっているのなら一時的に協力しようという気持ちも生まれるでしょうが、普通に利益が出ている状態であれば「会社はそんなに儲けたいのか!」と文句のひとつも言いたくなります。

 しかし、現在社会的に検討されている残業削減の取り組みは、会社が残業代を減らして利益をもっと出したいという理由だけではありません。おそらく、ここ数年の間に、少なくとも「だらだら残業」のような、理由のない残業はできなくなる仕組みが整備されることでしょう。それには、これまで払われていた残業代を見込んだ給与制度に代わっていくことでしょう。つまり、ホワイトカラーの給与システムは限りなく年俸制に近い制度になるであろうということです。

 そうなると、お金を目的に残業することは意味がなくなりますが、それはそれで別の問題点が浮かび上がってきます。

山崎将志/ビジネスコンサルタント

山崎将志/ビジネスコンサルタント

ビジネスコンサルタント。1971年愛知県生まれ。1994年東京大学経済学部経営学科卒業。同年アクセンチュア入社。2003年独立。コンサルティング事業と並行して、数社のベンチャー事業開発・運営に携わる。主な著書に『残念な人の思考法』『残念な人の仕事の習慣』『社長のテスト』などがあり、累計発行部数は100万部を超える。

2016年よりNHKラジオ第2『ラジオ仕事学のすすめ』講師を務める。


最新刊は『儲かる仕組みの思考法』(日本実業出版社)

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