近年、「異常気象」を肌で感じることが多いように思う人は少なくないだろう。
大雨が降ると、観測史上最大の降水量を日本各地で更新することが当たり前のように起こり、今まで氾濫することのなかった地域で大雨や台風によって川が氾濫するなど、これまでの常識を超える災害が、各地で頻発するようになっている。
それは日本に限らないことだ。世界各地で異常気象は観測され、自然界に大きな影響・変化を及ぼしている。この異常気象の要因の一つと言われているのが地球温暖化だ。
『いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界』(岩波書店刊)では、数々の事例を気象予報士の森さやか氏が、いま起きている温暖化の問題を中心に、私たちに何ができるのか、今後の課題と解決策を考察している。月刊誌『世界』に毎月連載され、大好評だった2年間の連載にコラムを加え、まとめた一冊だ。
起きなかったことが起きている その原因とは?
地球は、太陽との位置や向きを変え、寒暖の場所を変化させたりはするが、結局、極地方は寒く、赤道は暑い。その温度差は100度以上に達し、この温度差の不均衡から台風をはじめとした、さまざまな気象現象が生まれる。
しかし近年、地球全体の温度が上昇し、これまでとは違う不均衡状態が発生しているという。
世界の平均気温は、産業革命前と比べると1度上昇しており、さらに世界全体が一様にして暖かくなっているわけではなく、低緯度から中緯度、さらに高緯度になるにつれ、気温上昇が著しい。
この南北の気温差の縮まりが、これまで見られなかった規模の異常気象につながっているという。
たとえば台風。インド洋や南太平洋で発生した台風は「サイクロン」と呼ばれる。
そのインド洋の北西部にあるアラビア海はサイクロンの発生が少なく、また勢力も強くないものがほとんどだった。
ところが、2019年秋にその前提を覆すような出来事が続けざまに起こる。10月、中心気圧915hPaのサイクロン「キャー」が発生する。この「キャー」はサイクロンの階級では最強の「スーパーサイクロン」に達し、同海域の観測史上、最大クラスとなった。
それだけではない。「キャー」発生から間もなく、別のサイクロン「マハ」も発生。同時に2つのサイクロンがアラビア海に存在するのは史上初めてだった。
この現象の一因が「ダイポール現象」と呼ばれる、海水温の変化だという。これはインド洋西部と東部の海水温がシーソーのように高くなったり低くなったりする現象のこと。2019年はインド洋西部のアラビア海の海水温が相対的に高くなっていたのだ。
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地球温暖化による異常気象は、熱帯地域のようなゲリラ豪雨や近年の台風の勢力の強さ、40度近い暑さが当たり前となった夏の気温など、私たちの生活にも大きな影響を与えている。
なぜ、地球がこんな状況になっているのか。本書から、今地球で起きていることを学んでみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。