恋愛をすると、脳はどうなるのか。
お腹がいっぱいなのに、なぜデザートは食べられるのか。
考や行動は脳によって生み出されている。また、脳は心という目に見えないものも生み出している不思議な器官でもある。これらの脳の謎を解明するのが脳科学だ。
「恋は盲目」の脳科学的解説とは
『世界最先端の研究が教える すごい脳科学』(坂上雅道著、総合法令出版刊)では、玉川大学脳科学研究所所長の坂上雅道氏が、脳科学的に正しい記憶力の向上のさせ方、脳科学的に正しいメンタルの鍛え方、恋愛の仕方やダイエット方法など、最新の脳科学による人間の心と行動の本性を科学的に検証して紹介する。
たとえば人は恋愛をすると、理性的な判断が下せなくなったり、いつもとは違う行動をとったりすることがある。なぜそのような状態に陥ってしまうのか。
恋愛をすると、脳の報酬系という部分が反応する。この部分は哺乳類の報酬と動機に関連するドーパミンが豊富な領域であり、恋愛で活性化される部位だ。中でも最愛の人の顔を見ていたり、恋愛感情が高まった人の脳の中は、報酬系の部位が非常に活性化する。これは学習に関わる部位なので、恋愛を学習していることになる。人間の恋愛に関連するさまざまな動機と感情は、報酬系によって生み出されていると考えられている。
いわゆる「恋は盲目」の状態は、脳の中で求愛段階のシステムが作動するからだと考えられている。一時的に脳の報酬系が活性化されることで、好きな相手と一緒にいたい、結びつきたいという感情が繰り返し生み出される。特定の相手と繁殖することで、繁殖のエネルギーを集中させ、ほかにエネルギーを使わないように節約するシステムでもあるのだ。ただし、動機づけは性欲と同じではない。なぜなら相手が誰でもいいわけではないからだ。性欲を感じるときは、感情に関わる扁桃体が反応する。
「甘いものは別腹」は本当か?
また「甘いものは別腹」というが、「別腹」のように感じられるのは、脳からの指令によって、お腹の中にデザート用のスペースを作っているからだという。別腹を作る指令は、脳の前頭前野という部分から送られている。この部位は、知的活動をコントロールするだけでなく、目や鼻などの感覚器官から得た情報を整理するエリアでもある。
おいしそうなデザートを見ると、それに反応した前頭連合野が摂食中枢に指令を出す。次にオレキシンと呼ばれる摂食促進物質が視床下部に放出される。オレキシンの分泌量が増えると、胃の働きが活発になるので、胃に入っている食物の一部が小腸に送り出されることになる。これによって胃の中に「別腹」ができるというわけだ。
なぜこんな行動をとってしまうのだろうと、自分の行動が不思議に思うときは、脳の働きが関わっている。脳科学から自分の行動を分析してみるのも面白いかもしれない。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。