1分程度の自己PRは、普段からトレーニングされているので比較的対応できますが、2分での自己PRは結構大変です。アナウンサーが1分間にニュースを読む速度が400字といわれているので、2分話すためには、800字ほど必要です。400字はキーセンテンスさえ押さえれば暗記できてしまうレベルですが、暗記した400字の文を800字に変換することは難しいので、面接官の質問に対してゼロベースで考えて回答する必要性があります。
ちなみに、この質問は私自身がよく使うのですが、9割方の学生が下を向いて回答ができなくなります。
しかし、意識の高い学生は回答することができます。印象的な回答としては、
・両親に対して、いままで育ててくれた感謝、家族が全員元気でいられることへの感謝、家計が苦しいのに仕送りをしてくれたことへの感謝を交えて、自分のことを語る
・高校の部活動で、本当はレギュラーになりたくて3年間頑張ったが補欠だった。補欠で試合を応援しなくてはいけないのはつらい経験だった。というような悔しい出来事を語る
などがあります。
これらの回答は、自らの実際の経験を踏まえているので、その学生の内面を見ることができます。この年齢に至るまでの経験や出来事、何がこの学生の根っこにあり、何が価値観になっているのか、という点も理解することができます。
学生にとっても、サークル活動・アルバイト・ボランティア活動以外のことを自分の言葉できっちりと話す機会にもなりますので、内容や伝え方次第では、その他の学生に対して差別化を図ることにもつながります。先に説明した通り、普通にエントリーシートを書かせること自体が時間の無駄になってしまう危険性が高いため、企業としてもエントリーシートの作成に工夫が必要です。
学校はインプットする場であり、社会人はアウトプットを求められる場です。
学生にとって就活とは、自らのアイデンティティを探しながら確立していく過程だといえます。オリジナリティにあふれたエントリーシートが、厳しい就活を乗り越えるポイントではないでしょうか。
(文=尾藤克之)
●尾藤克之(びとう・かつゆき)
東京都出身。経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。人間の内面にフォーカスしたEQ メソッド導入に定評。リスクマネジメント協会「正会員認定資格HCRM」監修、ツヴァイ「結婚EQ診断」監修等の実績あり。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)など多数。