不本意な就活結果に終わってしまった学生に原因を振り返ってもらうと、必ず出てくる反省点が「準備不足」である。本来この時点で必要な「戦略」をなんら打てていないのだ。
では、その戦略とは何か?
わかりやすくいえば、得たい成果から「逆算」して行動することだ。少し前のデータになるが、「2010年度のMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)クラス以上の大学の就活生300人を対象にした調査データ」からひもといた、選考各段階における通過率を基にした本文冒頭のチャートをご覧いただきたい。希望内定数と内定時期から逆算して、「いつくらいのタイミングで何をやっておくべきか」をイメージしておくことが望ましい。具体的には次のような感じだ。
【希望内定数と内定時期から逆算した就活スケジュール(例)】
・4月末までには、志望の大手企業から内定を得る
→4月中旬で最終面接のステップまで進んだ企業を最低2社以上持つ
→平均的な選考通過率と、自分がかけられる時間を考えると、4月上旬で10社以上の一次面接をクリアしておく
→2月時点で30社に出願書類を提出する
→12月時点で50社に応募。それまでには自己分析と企業研究、職種研究を終わらせておく
就活経験者ならご存知の通り、2~3月は各社の採用に伴うイベント(企業説明会、書類選考締切、筆記試験、面接など)が極度に立て込んでおり、とても準備と両立できる状況ではない。それまでに準備は終わらせておかねばならないのだ。
多くの就活生は上記のような計画を立てることもなく、なんとなく周囲が動き始めるのを横目に「そろそろやんなきゃいけないかな」などと受動的に活動している。それでは思い通りの結果を得ることは難しいだろう。
●誤解(2):求人倍率は改善傾向だから、内定を得るのは以前よりラクになっている
リクルートワークス研究所の調査「第30回 ワークス大卒求人倍率調査(2014年卒)」(http://www.recruit.jp/news_data/release/2013/0423_7113.html)によると、14年度の大卒求人倍率は1.28倍。これは就活生100人に対し、仕事が128件ある計算だ。リーマンショック以降持ち直し気味で、15年度は景気回復の影響もあり、採用数増を公言する企業も増えている。
しかし、この数字だけを見て安心してしまってはいけない。1.28倍とはあくまで結果としての平均値である。少なくとも、この数字の根拠となる条件は確認しておきたい。
まず、この1.28倍という数字は「民間企業の求人総数54.5万件÷民間企業への就職希望者数42.6万人」という式から算出されている。実はこの数字、前年対比でみると「民間企業の求人総数」は前年度より2.6%、「民間企業への就職希望者数」は3.1%、それぞれ減少しており、分母の減り幅のほうが大きいために、結果として倍率も大きく見えているだけなのだ。自民党への政権交代により公務員の採用枠が増え、ある程度の学生が公務員志望へ流れたこともあろう。つまり、就活生にとって決して競争が有利になっているわけではない。
また、リクルートワークスの同調査によると、従業員数300名未満の中小企業の求人倍率は3.26倍だが、5000名以上の大企業は0.54倍と、極端に狭き門となっている。これは多くの就活生がイメージのわきやすい大手企業に殺到していて、同時に中小企業に対しては「イメージがわかない」「ピンとこない」として見向きもしていない状況を表している。しかし、仕事や職場に対する価値観は人次第だ。人によっては無名な中小企業のほうがフィットするケースもあり、大企業志向が機会損失になっている可能性を指摘しておきたい。
●誤解(3):学歴フィルターの対象が拡大傾向だから、高学歴でなくても大丈夫
大手企業を中心にここ数年、「ターゲット採用」の名のもとに実質的な「学歴選別」が浸透しつつあることをご存知だろうか。人材コンサルティングを手掛けるHRプロが400社を対象にした調査結果によると、15年度の採用において「ターゲット採用を採り入れる」と回答した企業は55%にのぼり、同社による4年前の調査から20%以上増えている。
知名度が高く、採用数の割に膨大な応募者が殺到する大手企業は、その応募をさばくだけでも手間と時間を取られてしまう。それくらいなら、採用対象とする母集団を予め「一定の上位大学」に絞り込んでしまい、集中的に情報開示と選考をしていこうという考えが「ターゲット採用」だ。対象になるのは、GMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)クラス以上が中心といわれる。