日本のアーティストやアイドルなどが発表する音楽の総称として「J-POP」という言葉があります。きっとそれぞれに思い入れのある曲や好きな曲があると思いますが、
「この曲ってあの曲と似てない?」
「CDって以前より売れないってホント?」
「あの有名歌手が好きな人に会えないという歌ばかり歌うのはなんで?」
などなど、疑問に思うことも多いものです。
そんな、なじみ深くも謎につつまれた「J-POP」にまつわるヒットの法則を、お笑い芸人でありながら音楽にも精通する才人、マキタスポーツがユーモラスに、かつ鮮やかに解き明かしてくれるのが『すべてのJ-POPはパクリである~現代ポップス論考~』(マキタスポーツ/著、扶桑社/刊)です。
■ビジュアル系に欠かせない3要素
CDがどんどん売れなくなっていると言われる今なお、安定したセールスを維持しているのが「ビジュアル系」です。
「ビジュアル系」といえば、一般的なイメージとして「男たちが化粧をして、黒ずくめの衣装を着込んで、耽美的で頽廃的な歌を歌う」あるいは「ヘビーメタルやグラムロックに影響を受けたお化粧系のバンド」というものがあります。昔でいえばX JAPAN、LUNA SEAなどがこれに該当したわけですが、今は容姿も音楽的特徴も多様化して、このイメージは古いものになりました。
しかし、だからといって定義できなくなったわけではありません。マキタスポーツさんは今も昔も通用する「ビジュアル系」の定義として
・キメ(演奏中のバンドメンバーの決めポーズ&観客の「決め事」の振り付け)
・カオ(ボーカリストの条件はとにかく「顔」がいいこと。人気がないと「もっとイケメンを入れようぜ」とすげ替えられてしまうことさえありえるとか。)
・ヒモ(観客もスタッフも女性ばかり。あらゆる意味で女性に支えられている)
の3つの要素が揃っていることを挙げています。
■日常の言葉を「ビジュアル系」に変換すると…?
そして、ビジュアル系の特徴として外せないのは何と言っても「歌詞」です。
非日常的で耽美的な世界観を表現する歌詞は、やはりこのジャンル独特のもの。マキタスポーツさんは、ビジュアル系バンドの歌詞で使われる言葉は「ドレスアップされている」といいます。
たとえば、せっかくゴシックスタイルの衣装とお化粧でキメても、歌詞が月並みであったら、非日常感が台無しですよね。だからこそ彼らが自分たちの志向する世界観に合わせて、言葉を「ドレスアップ」するのは必然なのです。
さて、ここからはマキタスポーツさん流の「言葉のドレスアップ」。
日常的な言葉をビジュアル系風にドレスアップすると、
・アルバイト→定められた瞬間(とき)
・ポケットティッシュ→街頭からふいに差し伸べられる神の御加護
・お中元→灼熱のギブ&テイク
となるというのです。
これにならって「お弁当」「サービス残業」「マンガ喫茶」「冷麺」など日常の言葉をビジュアル系風にドレスアップするとどうなるのか、考えてみると面白いかもしれませんね。