顧客が “買わない”理由の検証は、なぜ失敗する?「ニーズ断捨離」の具体的手法
国内業務用ミラーで市場トップシェアを誇るコミー社長の小宮山栄氏は、「日経トップリーダー」(日経BP社/09年8月号)のインタビュー記事『社員14名の世界企業コミー 信用が信用を生む、小さな市場の生存戦略』内で次のように語っている。
「売れなかった理由は、デザインが悪い、価格が高い、宣伝の仕方が悪いなど、誰でも山ほど言える。だから、たとえ1000人に声をかけて1人しか買わなくても、売れない理由をあれこれ考えるより、その1人がなぜ買ってくれたのかを深く聞く方が次につながると思う。われわれの立場から見れば、1つしか売れなくても、お客さまの立場からすれば『購入の決断』をしたのだ。そこのところを徹底的に追究していく」
このように、実際に買った顧客がなぜ買ったのかを、事実を元に分析することが近道なのだ。
つまり主観を排するためには、顧客のリアルなデータに基づき、買う理由を客観的に議論をする必要がある。実は社内を探してみると、これまであまり注意を払っていなかった顧客のリアルなデータは意外とたくさんあるものだ。
例えば、過去に行ったアンケート結果や、製品やサービスに対するクレーム。コールセンターに届いた顧客の声も、重要な顧客データだ。顧客の購買情報も、リアルな顧客の姿を表している。
実はこれらは「顧客が買う理由」を考える上で、ダイヤモンドの原石なのだ。それらのリアルなデータを目の前にして、関係者で議論をすると、新しい発見があるはずだ。例えば、
「高価格帯のこだわり商品を希望する顧客が増えている。ここ数年なかったことだ」
「これまで過半の顧客が製品群Aを買っていたのが、ここ1年間は製品群Bと併せ買いする顧客が急増している」
「少数派と思っていた顧客グループが成長している」
このようにして、新しい傾向を発見できる場合が多い。発見に対して、さまざまな関係者が自分の経験で意見を交換し合うことで、さらに新しい発見が得られる。主観ではなくあくまで事実を元に、事実を組み合わせて「買う理由」を議論するということだ。それらを組み合わせて、(1)~(4)を一気通貫で考えていくのだ。
●仮説を体当たりで検証する
ここで重要なことがある。上記のプロセスでつくった「顧客が買う理由」は、あくまで仮説であるという点だ。会議室で考えたアイデアは決して正解ではないのだ。だから、これだけでプロジェクトを進めてはいけない。