「おじぎをやめると、商品は売れる」
この言葉に対して、多くの営業マンは拒絶反応を起こすのではないだろうか。「おじぎをしなければお客様に嫌われる」「セールスの場でおじぎは必要不可欠だ」…ほとんどの人が瞬間的にそう思うだろう。
確かに「おじぎ」は日本人にとって重要なコミュニケーションツールの一つだ。相手に敬意と感謝を伝えるポーズであり、深々とおじぎをされて悪い気持ちになることはそうない。しかし、このポーズの根源は、頭を差し出す=相手に命を預けることを意味し、相手に絶対的な服従を示す行為だったのだ。営業において「おじぎ」とは、営業マンがお客に「服従を誓う行為」そのものになっているとしたら…、あなたはどう思うだろうか。
高額販売ビジネスコンサルタントの五丈凜華氏は『頭を下げずに「時短」で商品を売る方法』(サンマーク出版/刊)の中で、これまでの営業の常識に異を唱える。「おじぎを辞めること」で、即座に圧倒的な結果を残すことができるという。今までの営業常識を180度覆す、全く新しい「実践販売論」を説いている。
■頭を下げてもモノは売れない、その理由とは
モノが売れないといわれる昨今、営業を取り巻く環境は厳しくなっている。
商品にオマケをつけても、値引きをしても、頭を下げても売れない。そして、結果を出せないまま時間は流れ、上司から叱責され、月が明ければ0からのスタート…。それでも、いつか売上に結び付くと信じて誠心誠意お客に頭を下げて、嫌われないようにとお客に従い、自社の商品を必死に売りこもうとする。
ところが、この想いはお客には伝わらない。なぜなら下手に出て好かれようとする営業マンの姿勢が、逆にお客からすると「しつこい」と拒絶される風潮になってきているのだ。
ここで考えてほしいことがある。営業活動の本当の目的は一体なんだろうか。営業マン自身が好かれることではない。自社の商品を好きになってもらい、それを買ってもらうことだ。営業マンが好かれようとしているだけでは、商品の魅力は伝わらないし、モノが溢れ飽和状態となった今、お客は商品にさえ振り向かない。
■大事なことは「おじぎ」ではなく、「お客が望むセールス」
五丈氏がこのように訴えるのには理由がある。
もともと“人間嫌い”だった五丈氏は、自分の世界に没頭できる和菓子職人として活躍していた。そして、商品開発の仕事を志して、ABC Cooking studioに転職。ところが営業部に配属となる。そして、営業マンとして一歩を踏み出したある日のこと、お客からの厳しい声が突き付けられたのだ。
「営業の人がしつこい」
「長々と話を聞かせて不快になった」
それまで五丈氏はネットや営業本に書かれていた「お客が好む営業マンとは、実直・丁寧・親切」という言葉を信じ、好まれる営業マンを演じていた。深くおじぎをし、お客の悩みや相談に何時間もつきあった。その結果がこの手痛いクレームだった。
そこで五丈氏は気づいた。お客の求めているのは、親切な営業マンなどではなく「お客自身が望むセールス」をしてくれる営業マンであることに。そして、そのセールスとは何かを徹底的に考えるようになる。