春節(中国の旧正月)にあたる2月中旬から下旬、秋葉原や新宿の電気街では中国人が大きな荷物をたくさん抱えている姿を目にしたり、ニュースなどでその映像を見たという人は多いだろう。いわゆる、中国人の「爆買い」だ。
2015年の春節期間中、過去最大規模となる約45万人もの中国人が日本観光に来て、この間の消費金額は約60億元(約1140億円)にもなったという。
スーツケースの中を日本製品でいっぱいにして帰国していく中国人たち。その中身はどういったものなのか。化粧品、医薬品、ステンレスボトルが秋葉原の家電量販店本店の2014年秋の売れ筋商品トップ3だ。そして、今年、売れに売れたのが日本製の温水洗浄便座だった。
なぜ、中国人が日本に来てこんなにも日本製の製品を買っていくのだろうか。
『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(中島恵/著、中央公論新社/刊)では、「中国人の日常」や「日本に対する本音」を普通の中国人への取材を通して具体的に紹介している。
2010年、中国は日本のGDP(国内総生産)を追い越し、世界第2位の経済大国となった。猛烈なスピードで経済的、軍事的に巨大化する一方で、いまだに日本人と中国人は日々の暮らしにおいては、大きな差がある。その理由は、経済成長に伴って発達したハードに比べて、ソフト面の充実が非常に遅れており、不十分であることが大きく、さらに、日本には存在しない中国特有の戸籍制度や濃い人間関係に立脚した国民性に影響されている部分もあるという。
日本人が意識せず、何気なく送っている日常生活でも、中国人から見れば質の高いものに見える。
例えば、日本には高品質で廉価な商品がたくさんある。中国のショッピングサイトではありとあらゆる日本製品を取り扱っているが、輸入品なので価格は高く、さらに本物かどうか確証が持てないという実情があるのだそうだ。また、2014年10月に日本では外国人対象の免税制度が変更となり、食品や化粧品、医薬品などの幅広い日用品が免税対象になったことも、中国人が日本製の製品を買っていく理由のひとつだろう。
他にも、「日本製は安全、安心」という定評と信頼感が中国人の間にも幅広く伝わっていることが挙げられる。食品偽装が蔓延し、大気汚染も深刻さをましている中国。どんなに撲滅しようとしてもニセモノが横行し、「中国製品は信頼できない」「本物ではないかもしれない」「何を食べても不安だ」と生活上の不安を口にする中国人は非常に多いという。
そのため、以前よりは比較的自由に海外に出られるようになった今、中国よりも何十年も前に発展し、高品質な商品や食材を売っている日本に大挙して押し寄せるのだ。
GDPでは日本を抜き、アジアの中心となりつつある中国だが、「暮らしレベルでは日本に永遠にかなわない」という本音が中国人から聞こえてくる。日本人には当たり前のように感じてしまっているが、日本の技術力の高さや接客などのサービスの質の高さを再認識させられる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。