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グループの中核企業が、中国企業との資本提携に横やりを入れたとの観測も

“再建途上”三菱自動車の足を引っ張る三菱グループの思惑

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 企業の収益性を判断する指標に「1株当たり利益率(EPS)」がある。上場企業ではふつう、EPSが増えれば株価は上がり、逆に減れば株価は下がる。そのEPSの計算式を「当期純利益÷発行済株式数」と覚えている人は多いかもしれないが、この計算式は正確には「当期純利益÷(普通株式の発行済株式数-その自己株式数)」である。カッコ内には優先株の数は含まれておらず、自己株式(金庫株ともいう)は差し引かなければならない。

 ということは、三菱自動車の優先株が普通株に転換されると、優先株を消却してもノーカウント、自己株式(9月末時点で約219万株)を消却してもノーカウントで、希薄化を防げない。希薄化を阻止して株価の下落を食い止めたければ、「自社株買い」を行って自己株式以外の発行済株式数を減らさなければならない。手持ちの資金を使って市場から自社株を買い入れ、それを消却するか、自己株式(金庫株)に組み入れる必要がある。

 だが、今の三菱自動車の財務には、億株単位の自社株買いを行えるような余裕がない。今年6月末時点の現預金残高は3000億円あるが、有利子負債がそれとほぼ同額あり、純資産は2580億円。「新中期経営計画の最終年度の13年度までに復配を目指す」と言いながら、今期の当期純利益予想はヨーロッパの生産子会社の株式売却損で250億円から130億円へ大幅下方修正され、当然無配継続。配当可能利益あるいは資本準備金の取り崩しで大型の自社株買いというシナリオは、とても描けそうにない。

 そんな状況でこの先、三菱グループが優先株をどんどん普通株に転換していったら、希薄化がさらに進んで株価が下落し、不利益をこうむる株主を失望させ、「株主に優しくない会社」と言われ、市場の評判は悪くなる。さらに経営のさまざまな部分に悪影響を及ぼす。だが、三菱自動車はそれをただ指をくわえて見ているしかない。

 だからこそ、4期連続で累積損失を計上していてまだ再建途上にもかかわらず、三菱グループ各社が、期限まであと1年半以上の猶予がある優先株を普通株に転換する権利を行使するのは、時期尚早な感じがする。 

●資本提携にグループの中核企業が横やり?

 こうした資本政策の問題は、「再建のアキレス腱」と言われながら新中期経営計画には具体的な対策が盛り込まれていなかったが、身内の三菱グループが火をつけた。一説にはプジョー・シトロエンとの破談後に進めていたという中国の某社との資本提携話が、「三菱の名にかけて許さない」というグループの大御所企業の横やりで頓挫したともいわれている。

 台湾のホンハイ・グループがシャープに出資した顛末を見て危惧したのかもしれないが、「そろそろ一人で歩きなさい」と言いながら優先株の普通株転換で希薄化の試練を与えて足を引っ張り、相変わらず名門意識を振りかざして、うるさく口を出しては財務改善のチャンスをつぶしているのだとしたら、困った親戚だ。金曜会御三家の三菱重工の御曹司という毛並みの良さが、かえって災いしているのかもしれない。

 もし、親戚たちが「普通株に転換して株価が下がっても、三菱グループがそろって株を保有し続ければ変なところに経営を支配される心配はない」と思っているとしたら、第二の成人式どころか、まだまだ子ども扱いだ。

 はたして三菱自動車の経営陣は、こんな状況をどう打開するのだろう。あるいは打開できないまま、成り行き任せで時間が過ぎていくのだろうか。
(文=寺尾淳/フィナンシャルプランナー)

BusinessJournal編集部

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