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「初音ミク」創作活動の中から、新ビジネス発見&育成?クリプトン社の“怖い”戦略

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(1)非合法組織として地下に潜伏する

 上記のコミケスタッフの方へのインタビューで、「同人誌を描く人は、基本的に創作をしたい人であり、創作物は『仲間内の公開で十分』と考えている人が多い」と伺いました。これが真であるなら方法は簡単。地下に潜るのです。閉じたコミュニティの中で、非合法な作品を発表し続けるのです。コミケで発表なんぞ論外です。現在は地下に潜る必然性は少ない(×ない)とは思うのですが、将来は、TPP等によってどうなるかわかったものじゃありません。

 ならば、私のようなITエンジニアを組織に取り込み、必要以上に強い暗号化を施して電子ファイル化した「同人誌’」を闇の拡販ルートで販売するのです。新宿や渋谷では、暗号鍵を提供するサイトのIPアドレスが記載された紙を、(麻薬、覚醒剤の販売のように)すれ違い様に手渡しする若者と、それを取り締まる警察との水面下のバトルが展開されることになります。

 また、同人誌への許諾を認めないマンガ家を、次々と拉致監禁、脅迫を担当するセクションを準備することも視野に入れるべきでしょう。(上記は、以下を説明するための伏線<ジョーク>です。真面目にツッこむのは禁止です)

(2)たくさんの「ピアプロ」、またはもっと大きな「ピアプロ」をつくる。

 ピアプロというのは、一言で言うと「許諾を一元管理するシステム」です。ならば、この仕組みをさまざまなコンテンツ分野で展開させていけばよいのです。なぜなら、このシステム(ピアプロ)は、クリプトン社によってうまく機能することが実証されているのですから。

 イメージとしては、出版社単位の「ピアプロ」(小学館ピアプロ、白泉社ピアプロ等)のようなものがあれば、出版社として二次著作を安心して管理できる上に、新しい新人の発掘も可能となります。

 必ずしも、無料で開放する必要はなく、低額に抑えた使用料を徴収してもよいと思います。あるいはその逆に、その作品の著作権を出版社が全部買い上げるようにしてもよいですよね。創作者は創作と公開の場が保証され、出版社は版権で利益を得ることができます。

 あるいは、マンガ家が個人でピアプロを立ち上げるという手もあります。マンガ家自身がルールを決めればよいのです。しかし、例えば「エロ」を認める/認めないという方針が、ファンを増やすか減らすかの判断は難しいとは思いますが。

 ともあれ、どのようなタイミングになるかわかりませんが、同人誌の世界は、上記の2つか、それ以外の何かの選択をしなければならない時がやってくるはずです。それは、こちら(http://biz-journal.jp/2012/11/post_1020_3.html)のコラムをご一読いただければ、かなり切迫した状況にあることをご理解いただけるかと思います。

●創作者側から差し伸べられる「愛と誠」もある

「泣いて」「すがって」「土下座して」という、二次創作者側からのアプローチに対して、一次創作者側からの「ここまでなら、使っていいよ」と書かれた「ラブレター」を具現化するアプローチがあります。

 今回紹介した「PCL」や「ピアプロ」もこれに該当しますが、もう一つ興味深い活動に、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」があります。チャンスがありましたら、このお話もさせていただこうかと思っております。

【謝辞】

 本連載コラム(「初音ミクと著作権シリーズ<全6回分>」)に関しまして、全面的な監修をしていただきましたクリプトン・フューチャー・メディア株式会社様に感謝申し上げます。特に担当の菱山豊史様には、私からの大量かつトリビアな質問に対して、PCL、ピアプロ等の解釈のほかに、同人誌や出版社の業界慣行、著作権の判例・解釈を、根気強く何度でも繰り返し教えていただきました。ここに深い感謝の意を表します。

(文=江端智一)
※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。

【註1】http://blog.piapro.jp/2009/12/post-311.html
【註2】「ピアプロリンク」のご利用手順 http://piapro.jp/static/?view=piaprolink_desc

【付録:クリプトン社に提出した江端の質問と、そのご回答】

BusinessJournal編集部

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