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箱根駅伝、元ランナーが予想~バランスの駒大、攻撃の東洋大、ジョーカー持つ日体大が激突

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 2012年箱根駅伝1区、丸の内(「Wikipedia」より/ぱたごん)
 今年1月、日本体育大学(以下、日体大)の30年ぶり10回目の総合優勝で幕を閉じた東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)。11月3日に、その前哨戦ともいえる全日本大学駅伝対抗選手権大会(以下、全日本)が行われ、正月に第90回大会を迎える箱根駅伝のシナリオがだいぶ見えてきた。そこで、現時点での有力校の戦力を分析し、箱根駅伝での戦いを大胆にも予想してみたい。

 全日本では、駒澤大学(以下、駒大)と東洋大学が中盤まで激しいトップ争い。4区・村山謙太の区間新で東洋大を突き放した駒大が3連覇を達成したが、全日本での「1位駒大、2位東洋大」という組み合わせは、これで3年連続だ。ちなみに過去2回の箱根駅伝は、駒大が2位と3位、東洋大が1位と2位。今回の箱根は駒大と東洋大、前回覇者・日体大の“3強”の争いと見ていいだろう。

●日体大は「5区・服部」で勝負に出る

 このなかで、唯一“ジョーカー”を握るのは日体大だ。前回、箱根駅伝を象徴する「山上り」の5区で爆走した服部翔大の存在が大きい。服部は前回、1分49秒のビハインドを1分35秒のアドバンテージに変えた男。優勝を狙う大学は、レースをひとりでひっくり返すことができる5区・服部を計算に入れながら、戦略を立てることになる。

 そして、今回の駒大と東洋大のチーム構成は非常に似ている。5区山上りに決定打がなく、6区山下りのスペシャリストが卒業。スピードランナーをそろえる一方で、“山”に不安を抱えている。往路をトップで折り返すには、4区終了時までに最低でも日体大から2分以上のリードを奪うことが最低条件だ。

 日体大は5区・服部で首位を奪い、逃げ切るのが勝ちパターン。駒大と東洋大は5区終了時で日体大を“射程圏内”にとらえておくと同時に、もうひとつのライバル校をどこかで引き離す必要がある。駅伝は力の差がほとんどなければ、追いかけるより、トップを走るほうが断然有利だ。なぜならば、先行する側は余裕を持ったプランで走り、後半の勝負どころに向けて力を温存できる。追う側はタイム差を削るためにハイペースで入るので、後者はスタミナ切れを起こしやすい。全日本の5~7区でも、東洋大の選手が駒大との差を前半で10秒ほど詰めたが、最終的にはその差を広げられている。

 全日本では1区と4区で駒大が東洋大に圧勝。これが勝負の分岐点だった。駒大・中村匠吾と東洋大・設楽悠太の1区でのマッチアップは、1万mの持ちタイムで上回る設楽悠を中村が31秒も引き離した。さらに駒大は4区・村山も区間新の快走で、東洋大の主軸・田口雅也を圧倒。箱根でも主力が入る区間でレースが大きく動くことになるだろう。

●バランス重視の駒大と攻撃的な東洋大

 駒大・大八木弘明監督は「バランスを重視」するタイプで、反対に東洋大・酒井俊幸監督は「大胆な采配」を振るうタイプ。駒大は窪田忍、村山、中村の配置がポイントになる。“花の2区”は村山か窪田が濃厚で、村山が2区に入ることになれば、窪田は復路のエース区間9区に回ることになるだろう。そうなると、バランスを重視する大八木監督は3区に中村を起用してくる可能性が高い。

 東洋大は設楽啓太・悠太のWエースの配置がカギを握る。設楽啓は3年連続で2区を好走しており、今回も2区で勝負にくるだろう。往路優勝を奪取するなら、設楽悠を前回に続いて3区に起用するしかない。前回1区区間賞の田口と2区・設楽啓で好位置につけて、3区・設楽悠で抜け出す。そして、8区終了時までに服部勇馬、大津顕杜ら他の主力を投入して、大量リードを奪うのが東洋大の勝ち方だ。

 全日本は8位に沈んだ日体大だが、アンカー・矢野圭吾の大ブレーキが失速の原因。矢野は前回の箱根9区で区間賞を獲得するなど、もともと安定感のある選手。今回の失敗は例外と見ていいだろう。それよりも、“山”区間がない中、7区まで3位をキープした戦力は評価できる。特に全日本2区で区間賞を奪った2年生山中秀仁の成長が著しい。箱根2区で4位と好走した本田匠は、故障の影響で全日本は外れたが、練習に復帰。今回の箱根では山中が2区に入り、本田がその他(3区など)に入ることになりそうだ。

 他の大学では、全日本3位の明治大学がダークホースだ。スピードのある選手が多く、その力がかみ合えば“3強”に割って入ることができる。日本人学生最速ランナー・大迫傑を要する早稲田大学、強力なケニア人留学生を抱える山梨学院大学と日本大学の3校も、エースの爆発力でトップ争いまで浮上することが予想される。

 各大学のチーム状態は正月の箱根を「100」とすると、11月の全日本の時点では「70~80」という仕上がり具合。前回の帝京大のように、全日本11位から箱根4位まで急上昇するチームもある。これからの1カ月半で、各大学がどこまで戦力をアップさせることができるのか。正月の名勝負を楽しみに待ちたい。
(文=酒井政人/Sportswriters Cafe)