業績悪化の主因は客離れだ。仕入先だった中国食肉加工会社が使用期限切れ鶏肉を使っていた事件が発覚した7月以降、同社メニューの安全性への不信から客離れが加速し、既存店売上高は8月が前年同月比25%減、9月は同17%減と大きく落ち込んだ。8月の既存店売上高減は7カ月連続、客数減は16カ月連続だった。業績回復の不透明感が一層強まる中、マクドナルド周辺ではサラ・カサノバ社長兼CEOへの風当たりも強まっている。
カサノバ氏は今年3月、前任の原田泳幸氏から社長ポストを引き継ぎ、すでに既存店売上高減が続く逆風の中、女性・家族客向け商品開発や宅配サービス拡充などに取り組んだが、既存店売上高減を止めることができなかった。
カサノバ氏は業績悪化要因について記者会見で、次のように釈明した。
「当社は100円のコーヒー提案や24時間営業などを先駆けた業界のリーダーだった。ただ、就任以来、毎日競合が現れ、当社の競争優位性が低下している。新しい戦略を実行に移そうとした時に使用期限切れ鶏肉問題が起きた。戦略は正しかったが、具体化の絞り方が不十分だった」
だが、この釈明を「認識外れ」と指摘する市場関係者は多く、前出アナリストは「経営戦略うんぬん以前の問題を把握できていないのではないか」と手厳しい。何が同社の惨状をもたらしたのだろうか。
●女性・家族客取り込み策の誤算
昨年暮れ、マクドナルドはメディアを対象に「2014年の新商品説明会」を開催した。説明会では「アメリカンヴィンテージ」と銘打った14年1―3月の大型キャンペーンを紹介。キャンペーンでは6種類の期間限定バーガーを発売すると、そのメニューを披露した。従来も「アメリカンシリーズ」として同様のキャンペーンを張ってきたが、今回は食材自体が訴求ポイントとなった。ビーフとチキンを使ったメニューを3点ずつ取り揃え、「ハンバーガーといえばビーフの固定観念を払拭。ビーフに比べて食感が軽やかなチキンで女性・家族客を呼び戻す」(同社)という戦略メニューだった。