外食業界、なぜ不振深まる?消えた5兆円をどう取り戻す?迫られるデフレモデルからの脱却
●不振にあえぐ外食産業
4月の消費税増税後、外食大手が軒並み不振に陥っている。
復活したといわれたファミリーレストランチェーンでは、サイゼリヤやジョイフルといった低価格ファミレスの既存店売上高は前年割れが続いており、好調を続けていたロイヤルホストも6月からマイナスに転じた。ガストは1~9月期で100.8%、4~5月は好調だったが、その後横ばいが続いている。デニーズは上期合計で100.9%とプラスだが、客数は減少している。
牛丼では吉野家が99.6%(2014年度上期)、すき家が96.9%(同)と不振の一方、「プレミアム牛めし」が売れた松屋は102.3%(同)と明暗が分かれた。
ハンバーガーチェーンでは、日本マクドナルドは長く既存店売上高の低迷が続いていたが、7月の期限切れ鶏肉使用事件発生以降2ケタの落ち込みが続き、減少に歯止めが利かない。積極的なメニュー投入が功を奏したケンタッキーフライドチキンは102.8%と、なんとか前年を上回った。
注目したいのは、価格を武器に成長を続けてきた大手外食企業が不振に陥っていることだ。
●デフレビジネスモデルは通用しない
価格を武器に成長してきた企業の基本戦略は、次のように解釈できる。
ひとつは、低価格メニュー・フォーマットの開発である。250円の牛丼、100円マック、全品280円の居酒屋など、他店より安いメニューの業態をつくる。これを実現するためコスト構造を抜本的に見直す。業界では30%といわれる原価率を徹底して削減し、正社員を減らしアルバイトやパートの社員を増やすことで、人件費を変動費化しコスト競争力を高める。
もうひとつは、フランチャイズを活用した大量出店である。直営事業も展開するが、フランチャイズ方式によって一挙に店舗数を増やし、知名度を上げ来店客数を増やすモデルである。
不振の要因は、こうしたビジネスモデルが崩壊しつつあるということである。日本経済新聞の調べでは、外食、小売業主要74社の人件費は前年比で7%と大きく増加した。景気回復に伴う人手不足からアルバイトの賃金が上昇し、人材確保競争に負けているのである。また、大量の出店戦略も限界にきている。人手不足による出店困難化に加え、出店余地も少なくなっていくという、外食産業の宿命というべき問題に直面しているのだ。