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JMR生活総合研究所「消費と会社の戦略を読む」(10月27日)

外食業界、なぜ不振深まる?消えた5兆円をどう取り戻す?迫られるデフレモデルからの脱却

文=松田久一/JMR生活総合研究所代表

●消えた5兆円の市場

 では、今後の外食産業をどうみるか、長期的な構造変化を読み取り考察していく。

 外食産業の市場規模(13年)は23.9兆円(日本フードサービス協会調べ)を誇る日本最大の市場である。百貨店・スーパーが16.4兆円、自動車市場が16.2兆円であるのと比較すると巨大な産業であることがわかる。店舗数は約75万店、従業員数は442万人となっている(09年)。

 だが、最大の市場ではあるが大きく縮小している。市場のピークは1997年の29兆円であり、16年間で5兆円が市場から消えたことになる。特定の業態ではなく全業態が減っていることから、外食産業内の競争ではなく、他業種に需要を奪われていることがうかがえる。

 最大のライバルはコンビニエンスストアチェーンだ。セブン-イレブンに代表される弁当・総菜のグレードアップ、淹れ立てコーヒーなどの品揃えを強化し、成功している。コンビニは日々業態フォーマットを変えている。そのターゲットが食品スーパーではなく、外食になってきているのは淹れ立てコーヒーをみれば明白である。もうひとつは宅配・ケータリングである。宅配ピザなどの宅配企業の売上高は約2兆円である。第3は持ち帰り弁当であり、売上高は2.7兆円と推計されている。

 外食産業は低価格競争に明け暮れている間に、他業界に顧客を奪われているのだ。

●低価格競争からの脱皮

 では今後、外食産業が失われた5兆円を取り戻すにはどうしたらよいか。

 味よりも価格を追求した結果コンビニに顧客を奪われているため、低価格競争から脱皮する戦略転換が必要だが、第一は、おいしいメニューへの革新である。セントラルキッチンに代表される調理手法ではおいしい料理に仕上がらず、顧客は満足しない。本当においしいメニューを開発しない限り、奪われた市場を取り戻すことはできない。他業界と比べた外食産業の優位性は、その場で調理できることにある。ここにこだわったメニュー・フォーマットの開発が求められているのである。

松田久一

松田久一

JMR生活総合研究所代表

JMR生活総合研究所

 生活者の総合研究に基づいて、新しい事実を発見し、その事実から戦略を組み立て、経験を生かしたコンサルティングを通じて、クライアントの問題解決を行う。1991年に設立してから今日までの約20年の間に、年間平均250、延べ5000のテーマに取り組んできた実績を持つ。主たる領域は、食品、飲料・酒、化粧品・日用雑貨、輸送機器、家電・情報通信、流通など生活者と接点を持つ業界。日本を代表する企業のマーケティング課題のソリューション(解決)に取り組んでいる。

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