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マスコミのあきれる不見識、NHKの政治批判封殺体質 籾井会長は爆問とサザン徹底批判

文=大石泰彦/青山学院大学法学部教授
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社会風刺について腰が定まらない日本のメディア

 これをどう読み解いたらいいのだろうか。「ヨーロッパのイスラム風刺は『表現の自由』による保護に値しない、いわゆる『やりすぎ』であるが、それでもテロ行為に及んで人を殺傷することは許されない」というのが、日本のメディアの風刺に対する見解なのだろうか。しかしそれなら、「私はシャルリー」というフランス市民の声は危険を助長するものとして、もう少し批判的に報じるべきではないのか。それとも、ムハンマド問題の時と今回とでは、日本のメディアの風刺表現の自由に対する考えが変わったと見ていいのか。あるいは、今回の事件が「北朝鮮指導者風刺映画問題」の直後だったため、その問題とは一転した風刺表現論を展開しにくかったのだろうか。

 なんにせよ欧州、特にフランスのメディアと比較したときの、日本のメディアの「風刺表現の自由」観の腰の定まらなさが際立っている。いうまでもなく、表現の自由も含む人権とは社会秩序あっての自由ではなく、むしろ社会秩序は人権保護のために形成されるべきものなのだが、日本では社会や国家の利益を至上のものとする考え方が良識としてまかり通っている一方で、自分たちを先進民主主義国と妄信しているため、今回のような事件が起きると欧米のメディアや市民の動向がわけのわからないものになってしまうのではないだろうか。

 1月10日付朝日新聞の記事によると、フランスの新聞リベラシオンは生き残ったシャルリー紙編集部のために社屋のワンフロアを無期限で提供し、放送局カナル・プリュス、ル・モンド紙なども支援を申し出ているというが、自らを危険にさらしてまで「過激」で「やりすぎ」の風刺紙を支えようとする信念とはなんなのか、日本のメディアももう少し突き詰めて考えてもらいたいものである。

 折も折、NHKが正月番組における爆笑問題の政治ネタを封印したことが報じられ、また昨年末の同局の紅白歌合戦におけるサザンオールスターズの政治風刺パフォーマンスも物議を醸している。同局の籾井勝人会長は、1月8日の定例記者会見で、前者について「公共放送で視聴者もいろんな方がいる。ギャグで、ある個人に対して打撃を与えているつもりかもしれないが、私は品性がないと思う」と批判し、後者については「そもそもサザンの歌って『わーわーわー』って歌じゃないですか。言葉よりも、リズムと激しい歌い方が持ち味ですから」との見解を述べたが、文化を担うべき公共放送のトップの風刺に対する無理解をなぜ、メディアはもっと取り上げて批判しないのだろうか。学者よろしく「イスラム世界対欧米の摩擦」などと大きなことを論じる前に、まずは「表現の自由」の担い手であるはずの我が身の腰の定まらなさを反省すべきではないだろうか。
(文=大石泰彦/青山学院大学法学部教授)

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