本来であれば、青少年にコンドームの使用を積極的に奨励すべき政府が、一部のコンドームを目の敵にしているということになるのだが、国民からは疑問の声が上がっているのだ。
なぜ、このような規制が生まれたのか? 規制を考え出した国家行政機関である女性家族部は、その理由を次のように説明している。
「青少年が性関係を結ぶ際、刺激を感じることを憂慮し、特殊コンドームの販売を規制することにしました」
つまり、「青少年の性行為自体は合法だが、気持ち良くなるのは違法」ということらしい。国民からは「どういう思考回路で、その結論にたどり着いたのか」「コンビニエンスストアの店員には、コンドームの目利きの資格がいるな」「快楽を感じたら違法なのか。なんでそんなことまで政府が関与するのか」など、激しい批判が展開されている状況だ。
なお、この不可解な規制によってもっとも打撃を受けているのがコンドーム産業であるのは言うまでもない。現在、韓国のコンドーム販売業者は、インターネット上で旺盛に販売活動を展開しているのだが、韓国検索エンジン大手のNAVERでは、成人認証をしなければコンドーム販売サイトが表示されないようにフィルタリングをかけている。ちなみに韓国検索市場でNAVERが誇るシェアは90%以上だ。韓国コンドーム業界は、ネットに最も親しむ青少年購入層に、実質的に購入を呼びかけられない状況に追い込まれているのだ。
韓国ニュースサイト「EDAILY」に掲載された、NAVER関係者談によると「女性家族部の規制があるので、青少年にコンドームを販売するすべての企業は、成人認証なしには検索できないようにしている」と話しており、また「一般のコンドームだけを販売している企業を別に扱えればよいが、物理的に限界がある」としている。
性文化の専門家たちも、この規制に関してはかなり厳しい批判を寄せている。たとえば「幸福な性文化センター」の所長ペ・ジョンウォン氏は「快楽がない性関係がこの世に存在するのか。そもそも、政府は国民に機械的な性関係を望んでいるとでもいうのか」といぶかしがりながら、「性に対する理解が乏しいなかでつくられた間違った規制だ」と指摘している。
確かに、客観的に見ても理解しがたく、ナンセンスな法律としかいいようがない。韓国政府が、コンドームのデザインにまで執拗に関与する理由はなんなのだろうか。見方によっては、青少年の性モラルの問題がそれほど深刻だとも考えられるし、よほどやることがなく暇だったとも考えられる。いずれにせよ、法律をつくった人々に一度、じっくり話を聞いてみたいテーマである。
(取材・文=河鐘基)