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中西貴之「化学に恋するアピシウス」

肉を食べないと生命維持の根幹に危険!脳機能低下やうつ、疲労蓄積の原因に

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ステーキ(撮影=筆者)
 野菜、魚介類、果物……市場に並ぶ豊富で新鮮な食材を見るたびに、私たちはいろいろな物を食べて生きていることを実感します。その中でも、現代人に最も人気がある食材といえば、やはりではないでしょうか。誰もが、時として無性に食べたくなる肉。今回は、その肉が私たちを魅了する理由について、化学物質の観点からお伝えします。


 肉に含まれる脂肪分は、同じ重さの炭水化物に比べて2倍のエネルギーを含むため、栄養の観点から見れば、肉を食べれば非常に効率よくエネルギーを得ることができます。

 約9000年前、人類は野生動物を飼い慣らし、移動する際も連れて歩くようになりました。その理由のひとつは、人間が食べられない残飯などを与えることによって、それらを家畜の脂肪に変換し、エネルギーの外部貯蔵庫、しかも自分で歩いて移動する食品庫として利用していたからだと思われます。

肉を食べると幸せな気分になる仕組み


「肉を食べたい」という感情は本能で、その感情は脳がつくり出しています。脳の中では、感情をつかさどるセロトニンという物質が脳細胞を活性化させる役目をしています。

 セロトニンが脳の中で大量につくり出され、細胞が活性化すると「うれしい」「楽しい」という高揚感や開放感が生み出されます。一方、うつ症状を示す精神疾患患者の脳内では、セロトニンの分泌量が不足していることもわかっています。

 脳がセロトニンをつくるには、原料のトリプトファンという物質を食品から摂取しなければなりません。つまり「うれしくなることをしたい」「楽しいことをしたい」という欲求を満たすには、トリプトファンを多く含む食品を選んで食べなければならない、ということです。

肉を食べるとうれしくなる仕組み(作成=筆者)
 トリプトファンは、たんぱく質を含む食品にはある程度含まれていますが、大豆などの植物性たんぱく質のトリプトファン量は多くなく、牛肉や豚肉、乳製品に多く含まれています。

 しかも、トリプトファンの量が少ないたんぱく質を摂取すると、トリプトファンが脳に入りにくくなるという困った問題もあります。食事制限によるダイエットを行っている人の中には、肉類の摂取量を減らしている人もいると思われますが、その場合、体はトリプトファン不足に陥ってしまい、それが原因で脳内のセロトニンが減少してしまっている可能性も否定できません。

 セロトニンは体内時計や睡眠、全身の恒常性も調節しているため、不足すると気分が落ち込むだけではなく、「朝起きられない」「夜眠れない」「なんとなくいつも疲れている」など、生命維持の根幹に関わる部分に影響を及ぼしかねません。精神衛生上、食事制限があまりよくないといわれるのは、これらが理由です。

 また、セロトニンには気持ちを落ち着かせる効果もあります。肉を食べたくて食べたくて仕方がない時に食べると、とても落ち着いた幸せな気分になります。これは、単に食欲が満たされただけではなく、トリプトファンを十分に摂取できたことで、脳の中がセロトニンで満たされたためであるとも考えられます。