日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命が株式を上場してから約3カ月が経過したが、事前の人気から一転、株価が低迷している。売り出し価格を割り込んでいる銘柄もあり、政府放出株で損失を膨らませている投資家の嘆き節が聞かれる。
3社が上場したのは2015年11月4日だった。初値は日本郵政が1631円(売り出し価格は1400円)、ゆうちょ銀行1680円(同1450円)、かんぽ生命は2929円(同2200円)だった。上場前に販売される売り出しについては抽選としていたが、投資家の人気が殺到。落選した投資家が多数出ている。これらの投資家は上場以降に購入したケースも多い。
「NISA(少額投資非課税制度)を利用して3銘柄まとめて買った投資家も少なくない」(大手証券)
上場後の高値は日本郵政が1999円、ゆうちょ銀行1823円、かんぽ生命が4120円。初値で購入してもそれなりのパフォーマンスが上がっている。しかも上場直後に、16年4月からゆうちょ銀行の預け入れ限度額を現行の1000万円から1300万円に、かんぽ生命の加入限度額を同1300万円から2000万円に引き上げることを決定。アフターフォローまがいの決定までして、株価の後押しのように見える演出まで行った。
ただ、年初からの株式市場の低迷で、株価はピークアウトしていったなかで衝撃が走ったのが、日本銀行によるマイナス金利導入だ。追加の金融緩和策として日銀が1月末に、銀行の当座預金の一部にマイナス金利を導入すると発表し、長期国債の金利が0.5%台にまで急低下(価格は急上昇)した。
ゆうちょ銀行やかんぽ生命は顧客から預かった多額の資金があり、これを運用している。金利の急低下で運用難から収益が悪化するとの観測で、特にこの2社の株価が下落した。3社ともに初値を下回り、なかでもゆうちょ銀行は売り出し価格すら下回っている。参加した投資家全員が損失という状況になっているのだ。日銀の日本経済を下支えする政策が、皮肉なことに郵政関連株の売り要因になってしまっている。
今後の成長戦略に暗雲
郵政3社の株価低迷が直撃している商品もある。日興アセットマネジメントが運用する投資信託「日本郵政株式/グループ株式ファンド」がそれだ。2月3日現在の基準価額は8791円。1万円がスタートなので、12%余り値下がりしたことになる。