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ペット用犬を狭いケージで糞尿処理せず乱繁殖、ショップで売れ残りは廃棄…ペット業界の闇

文=関村泰久/ジャーナリスト
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ペット用犬を狭いケージで糞尿処理せず乱繁殖、ショップで売れ残りは廃棄…ペット業界の闇の画像1「Thinkstock」より

 2月2日、東京都内で昨今のペットブームを取り巻く現状を憂う関係者による勉強会が開催された。参加者は100人前後で、女優やキャスター、新聞記者らがボランティアで参加し、悪質なブリーダー(動物の生産業者)の実態などに関する報告や活発な質疑がなされるなど、注目すべき社会派イベントであった。

 議員立法によって成立した動物愛護法について、ブリーダーが単なる登録制で行政による強制立ち入り権限がない実効性に乏しい法律であるなどの指摘がなされたほか、行政による殺処分ゼロという目標の形骸化や、別のかたちで処分する「引き取り屋」の実態なども紹介された。このほかにも、「ペットショップは飼育用グッズのみ販売すべき」「ペットを入手したい人は、信用できるブリーダーから入手してほしい」といった意見も出た。

 こうした声が上がる背景には、一般的にはあまり知られていないペット業界の闇がある。

悪徳なペットショップ

 犬や猫をペットとして飼う人は昔からいたが、特に近年、ペットに愛情を注ぐ人が多くなっている。ペットを失った喪失感を「ペットロス」と呼ぶなど、ペットを家族同然に愛する人も多い。

 一般社団法人ペットフード協会の調査によると、犬の飼育頭数は近年減少を続け、猫は横ばいとなっている。一方で、ホームセンターやイオンなどの流通業が生体小売業に乗り出しているほか、ペットショップも増えているようにみえる。

 情操教育上もペットを飼うことは良いとされており、子供は命の尊さを学び、感情に乏しくなった高齢者もペットと接することで笑顔を取り戻すといわれる。このように、ペットは人間の生活にとって大事な存在であることは間違いない。

 しかしながら、ペット数自体が増えているわけでもないのにペットショップが多く存在するのは、やはり「儲かる」商売だからである。そして、残念ながら生き物であるペットを単なる「金の卵を生むニワトリ」としか見ていない悪徳業者が後を絶たない。

 クラブで働く人が客にバッグの代わりに血統書付きの子犬を買ってもらい、それをペットショップに引き取ってもらうことでお金を得る人もいる。筆者は以前、クラブで働く女性から、複数の客に同じ種類のバッグを買ってもらい1つを残して残りを売ってしまえばバレない、という話を聞いて、呆れながらも感心したことがあるが、同じことをペットでやると話が違ってくる。それに加担しているペットショップも、利ザヤ稼ぎを前提としているなら同罪といえ、実際にそうした店も存在している。

 さらに、もっと悪徳なペットショップもある。

 ペットショップではかわいい子犬の人気が高いが、成長してもなお売れない犬は、値下げされ投げ売りされる。それでも売れないと捨ててしまう店もある。また、仔犬のうちに買われても、飼い主もその責任や生涯飼育の大変さを認識せず安易に買った場合、生活や住環境の変化により捨てる無責任な例も後を絶たない。もちろん、こうしたペットショップや飼い主の行為は動物愛護法違反であるが、現実的に取り締まりは困難である。

劣悪な環境で繁殖

 そして、さらに悪質な例もある。「パピーミル」といわれる、劣悪な環境で動物を繁殖させる悪徳ブリーダーだ。実際に埼玉県のあるブリーダーは、人気犬種を繁殖犬として身動きが取れないほどの狭いケージに閉じ込め、最低限の餌と水しか与えず、さらには糞尿の処理もせず何年も繁殖させている。

 この乱繁殖は遺伝的疾患の蔓延という問題を引き起こしている。何十匹のうち一匹だけ生まれる毛並みのいい障害のない犬だけがペットショップに高値で卸され、そのほかは捨てられたり飼い殺しにされたりする。動物愛護法では飼い主が決まっていない動物も対象であり、違法行為に該当する可能性がある。

 これまで人間がペットを傷付けても、刑法ではせいぜい器物損壊罪が成立し得る程度だった。その状況を改善すべく、議員立法によって動物愛護法が成立した。しかし、前述のとおり実効性の乏しい法律であるため、悪徳なペットショップやブリーダーの取り締まりにはつながっていない。

 ペットの購入を検討している人は、飼育には責任が生じることを認識すべきである。そして、購入しようとしているペットショップは、本当に「命」を大事にしている店なのか、また、そのペットショップが悪徳ブリーダーと取引をしていないかを注意すべきである。

 ペット里親会などペットの保護に携わる関係者は、悪徳ブリーダーの存在を知っている。ペットショップは自店にペットを卸しているブリーダーを明らかにすべきである。また、シェルターなどで保護されている動物を家族に迎えるという選択肢も考えてはいかがだろうか。
(文=関村泰久/ジャーナリスト)

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