こんなことをしている人がいたら、どう思うでしょうか。きっと「ペットがかわいそう」と感じる人が多いでしょう。暴力やネグレクト(飼育放棄)とはまた違った意味での動物虐待に当たるかもしれません。
世の中には、あまり知られていないものの、「これは虐待ではないのか」と思うような境遇で生活している動物が少なくありません。
例えば、採卵用の鶏は、60センチ×40センチのケージの中に7羽ほど入れられ、自由に水を飲むこともできない状態で飼われているケースがほとんどです。
食用の鶏は、生まれてから鶏肉として処理される日まで、太陽の光を浴びることなく一生を終えます。そして、生活スペースは、ほとんどが20センチ四方ほどの広さです。
何が虐待になるのか?
では、ペットの犬や猫が幸せな暮らしをしているかというと、必ずしもそうではありません。
例えば、犬を2メートルぐらいの鎖につないで自由に動けなくしているのは、虐待にならないのでしょうか。「毎日、散歩に連れていけばいい」という考え方もあると思います。しかし、それなら家族旅行などで1週間放置していた場合は、虐待を認めるのでしょうか。
たとえ餌や水が確保されていたとしても、ずっと運動できない状態が続いた場合、それは動物虐待になってしまうと思います。
ペットショップに行くと、ガラス越しにかわいい子犬や子猫の姿を見ることができます。これらの犬や猫は、1日1回、散歩に連れていってもらっているのでしょうか。また、広い空間で自由に遊ぶことができているのでしょうか。
私がスーパーマーケットの品質管理業務を行っている時に、「生体販売」という言葉を耳にしたことがあります。その意味を聞いてみると、「生きている子犬や子猫を、スーパーの駐車場や入り口などで販売すること」でした。
日曜日に子供と一緒に買い物に行き、そこでかわいい子犬が売られていれば、子供の「欲しい」という一言で、思わず買ってしまうかもしれません。しかし、スーパーの入り口に置かれた小さな檻に閉じ込められた子犬たちは、自由に動き回ることもできず、散歩に行くこともできず、買ってもらうのを待つしかないのです。
また、売れ残った子犬たちは次の場所に移動することもあります。何回も移動を繰り返し、誰かに買われるまで、自由に動き回ることもできない小さな檻の中で生きていくしかない場合もあるのです。
こういった、動物を衝動的に買わせるような販売方法自体も問題だと思います。
動物の飼育に関する法整備が必要
愛玩目的で買った動物は、天寿をまっとうするまで責任を持って飼うのが飼い主の務めです。しかし、その当たり前のことができない人が多いのも現実です。
「年をとったから」「病気になったから」「引越しで飼うことができなくなったから」「子供が飽きてしまったから」……。人間側のさまざまな理由で放り出された動物たちが、行政によって処分されていきます。
動物の幸せを考えていない人、「ペットは死ぬまで飼う」という当たり前のことができない人には、動物を飼うことを禁じるような法律が必要だと思います。さらに、暴力行為などを行った人には厳罰を加え、二度と動物の飼育を禁止する必要があると思います。
動物の販売方法や飼育に関しては、具体的な法整備が必要だと思います。
あなたは、ペットショップの檻の中で子犬が売られている様子を、動物虐待だとは思いませんか?
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)