2月、女優の酒井若菜が膠原病を患っていることを発表して話題を呼んだ。
膠原病とは、ひとつの病気を指すものではなく、複数の病気の総称であり、酒井は19歳の時に発症したという。しかし、昨年、別の種類の膠原病を発症、治療が必要になったため明らかにしたようだ。
酒井は、体調について「大丈夫です。診断された時はショックだったけど、前向きに捉えている。病気を知るきっかけ、励みになれば」とコメントしている。
今のところ、入院や手術などは伝えられていないが、症状が重くドラマの収録などがつらい時もあったといい、今後の芸能活動に与える影響も心配される。そもそも、膠原病とはどのようなものなのだろうか。新潟大学名誉教授の岡田正彦氏に聞いた。
「膠原病の『膠』は、『にかわ』とも読みます。にかわとは、動物の皮や骨からつくられる糊のことで、主成分はゼラチン(コラーゲン)です。これだけでは、なんのことかわからない人も多いと思いますので、順を追って解き明かしていきましょう。
膠原病を理解するためのヒントは、『免疫力』にあります。人間の体には、外から侵入してくる異物(細菌やウイルスなど)を攻撃する仕組みとして、免疫力が備わっています。大切なのは、あくまで『自分ではないもの』に対して、免疫反応が起きるということです。
しかし、なんらかの原因で、自身の体の一部を『他人』と誤認してしまう事態が生じることがあります。その際に生じる免疫反応は激烈で、例えば、子供に多い『1型』の糖尿病では、血糖値を下げるホルモンをつくる細胞が誤認され、破壊し尽くされてしまいます。このような病気は多数あり、まとめて『自己免疫疾患』と呼ばれます。
細胞や組織の隙間には、互いをつなぎとめるにかわのような物質がいろいろと存在していて、前述のコラーゲンもそのひとつです。そして、これらの物質に対して免疫反応が起きる自己免疫疾患が、膠原病です」(岡田氏)
原因不明のため、誤診も多い膠原病
岡田氏によると、「全身性エリテマトーデス」「強皮症」「皮膚筋炎・多発性筋炎」「結節性多発動脈炎」「リウマチ熱」「関節リウマチ」の6つが狭義の膠原病とされ、いずれも女性に多く認められるという。
「対象が全身に広がるため、膠原病はその原因も症状も多彩です。直接的な原因は不明ですが、遺伝子異常、ウイルス感染、ワクチン接種、喫煙、紫外線などが発病を助長していると考えられています。
症状は『微熱が続く』『関節や筋肉が痛い』『赤い発疹ができる』『リンパ腺が膨れる』『指先が真っ白になる』などです。ただし、これらの症状は膠原病以外でもしばしば見られるため、誤診された結果、症状を悪化させたり、病院をたらい回しにされたりする患者さんも少なくないようです。簡単な血液検査である程度判定ができることも多く、適切な対応が望まれるところです。
最近は、ホルモン剤や免疫抑制剤による治療が進歩し、5年生存率も95%と大幅に改善しているため、膠原病の診断を下されたとしても、悲観することはありません」(同)
酒井の今後の活動に支障が出ないことを願うばかりだ。
(文=編集部)