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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

住宅ローンによる生活破綻者増加…身の丈に合わない家購入は危険

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
住宅ローンによる生活破綻者増加…身の丈に合わない家購入は危険の画像1資料:日本弁護士連合会消費者問題対策委員会『2014年破産事件及び個人再生記録調査』

 最近、「中年破綻」や「老後破綻」といったキーワードが目につくようになった。そして、もはや経済的な困窮は大人だけにとどまらない。

 厚労省の国民生活基礎調査によると、18歳未満の子どもの貧困率は、1985年に10.9%だったものが、2012年に過去最悪の16.3%。つまりおよそ6人に1人が貧困という結果になっている。貧困率とは、世帯収入から国民一人ひとりの所得を試算して、順番に並べた場合の真ん中の所得の半分(貧困線)に届かない人の割合を指す。

 今回の調査では、中央値は244万円、貧困線は122万円。つまり、毎月10万円程度で生活しているということであり、これは生活保護の水準を下回る。

 ほかにも、非正規雇用や女性、ひとり親の貧困などが社会問題化しているが、安定した仕事と収入を持ち、普通に生活できていた家庭が破綻に追い込まれるケースもある。

 一般的に生活が破綻する原因として考えられるのは、(1)病気、リストラ、介護などによる失職・収入減、(2)教育費負担の増加、(3)住宅ローン返済の3つである。なかでも、住宅ローン破産には要注意である。

 日本弁護士連合会の調査によると、破産債務者が多重債務を負担するに至った理由として、「生活苦・低所得者」(60.24%)がもっとも多いが、08年の調査以降、「住宅購入」も増加傾向にある。14年の調査では、97年の調査以降の最大値を更新し、16.5%(前回12.24%)に跳ね上がった。おそらく、「失業・転職」(19.84%)や「給料の減少」(13.47%)等にともなって、住宅ローンが払えずに破綻せざるを得ない状況が深刻化しているようだ。

 ただし、失業・転職、給料の減少と住宅購入の関係をみると、失業・転職が高止まりの状態で横ばい。給料の減少は減っているにもかかわらず、住宅ローン購入が急増している点に注意を払う必要がある。この結果はまさに、“身の丈に合わない”住宅ローンを組む人の多さを物語っているからだ。

安易な高額住宅ローン購入の危険

 身の丈に合わない住宅ローンとは、返済能力以上に借り過ぎている人のこと。その背景には、史上最低水準といわれ続けている住宅ローン金利の低さや住宅ローン控除などの手厚い税制優遇、物件価格高騰等がある。住宅ローン金利の動きは以下の図表の通りだが、とくに変動金利の水準は低く、民間の住宅ローン利用者の半数程度が変動金利となっている。

 物件価格についても、首都圏の場合、新築マンションの平均購入額は、05年は3893万円だったものが、14年には4340万円。この10年足らずで1.1倍と割高だ。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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