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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

住宅ローンによる生活破綻者増加…身の丈に合わない家購入は危険

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

 それに対して平均ローン借入額も、05年が2,965万円だったのに対して、14年は3539万円と増加。しかも、モデルルームの営業担当者や不動産広告の「頭金0円でも買えます」というセールストークを信じ、十分な自己資金を準備せずに、安易に高額な住宅ローンを組んでしまう。

住宅ローンによる生活破綻者増加…身の丈に合わない家購入は危険の画像2民間金融機関の住宅ローン金利推移(「住宅金融支援機構 HP」より)

マイナス金利

 さらに今、この住宅ローンに大きな影響を与える政策が実施されている。今年1月29日の日銀政策決定会合で決定されたマイナス金利の導入だ。翌月2月16日、実務的にもマイナス金利の適用がスタートし、預金金利が引き下げられた。

 マイナス金利政策が、私たちの生活にどんな影響を及ぼすのか国民の不安が広まるなか、住宅ローン金利と関係が深い長期金利が低下。大手メガバンク等では、固定金利型を中心に住宅ローン金利の引き下げを発表した。

 まず三井住友銀行が、なんと月の半ば2月16日から10年固定を年0.9%に下げ、みずほ銀行もこれに追随。三菱東京UFJ銀行はさらに年0.8%にすると発表して、関係者は騒然となったが、その後すぐに三井住友信託銀行では0.5%にすると発表。この金利水準は、変動金利と変わらないかそれ以下である。

 今のところ変動金利にはほぼ影響がないが、今後、各銀行の引き下げ競争の過熱がどこまで進むのか空恐ろしいほどだ。

家計破綻しないために

 先日、ある地方銀行の住宅ローン担当者に伺うと、マイナス金利政策導入以降、とにかく「自分の住宅ローンはどうなるのだ」という問い合わせが殺到しているという。

 今後、借換え需要も高まる可能性が高いが、とにかくこれから新規でマイホーム購入をお考えであれば、まず住宅ローンを組む場合、「借りられる金額」=「返せる金額」ではないことを肝に銘じておくこと。安心して借りられるお金というのは、実はそれほど多くないのだ。

 また、住宅ローン残高を減らしたいからといって、ひんぱんに繰上げ返済する「繰上げ返済貧乏」にも要注意だ。住宅ローン返済中に、子どもの教育費や親の病気、介護などでお金が必要になることもある。ローン返済しながら貯蓄できるかどうかも安心できる住宅ローン返済の重要なポイントである。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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