足元で、わが国経済の閉塞感がなかなか払拭できない。アベノミクスの政策効果である円安・株高で景況感は一時的に盛り上がったものの、昨年11月中旬以降、円安の一服感や不安定な海外経済の影響もあり再び悪化している。今年の春闘の賃上げ率は昨年を下回る見込みで、家計部門の実質ベースの所得が大幅に増えることは考えがたい。
その一方、食料品などの価格が上昇し、庶民の生活実感は厳しさを増している。短期的に見ると、個人消費の大幅な伸びは期待できないだろう。企業部門は、円高傾向に傾きつつあることに加えて新興国などの経済の低迷もあり、設備投資にあまり積極的な姿勢が見られない。今後、財政政策による景気押し上げ効果は期待できるものの、それによってわが国経済の本源にある問題が片付くわけではない。
アベノミクスはかなり厳しい状況に追い込まれつつある。本当の意味で日本経済を活性化するためには、規制緩和などの構造改革=イノベーションが必要だ。
日本経済が抱える本源的な問題
日本経済は、構造的に大きな問題を抱えている。最も重要なポイントは、人口構成の問題だ。基本的に人口と経済活動には密接な関係が存在する。人口が増加すると、モノを買う人は多くなり消費は伸びやすい。また、若年層が厚ければ、生産年齢人口=働き手の数が多くなり、豊富な労働力を得やすくなる。それは経済活動にとって重要なメリットだ。
わが国のように人口減少・少子高齢化が進む社会では、経済活動そのものが低下しやすくなる。しかも、社会保障費の拡大によって国民負担は増大する。負担の増大によって、将来年金制度の維持が難しくなるなどの漠然とした懸念は、人々の消費意欲を低下させる可能性が高い。供給サイドの企業では、既存製品の国内需要の伸びが期待できないため、需要の拡大を狙って多くの人口を抱える海外市場へと展開しなければならない。
積極的に海外展開していくためには、為替の変動や現地企業の経営などのリスクを負うことになる。リスク・テイクのための負担は決して小さくない。そうした国内事情を考えると、政府は新しいことにチャレンジする社会のエネルギーを醸成することが必要になる。政治のリーダーシップとしては、新しいことにチャレンジするイノベーションのスタンスを示すことが求められる。