2月29日、準大手ゼネコンの熊谷組の株価が急落した。一時、前週末比73円(25%)安の222円と、2013年10月以来の安値に沈んだ。熊谷組が施工した神奈川県横浜市西区のマンション「パークスクエア三ツ沢公園」で新たな施工不良が見つかり、販売元の住友不動産が住民に全棟建て替えを提案したと報じられたことが引き金となった。
3月5日、横浜市内のホテルで住民説明会が急きょ開催され、販売元の住友不動産と施工した熊谷組は、5棟の住宅棟すべての建て替えを提案した。熊谷組の樋口靖社長は初めて住民説明会に出席したが、住友不動産の仁島浩順社長は姿を見せなかった。
同マンションは、03年に住友不動産が分譲した。分譲後しばらくして住民が手すりのズレを発見。施工会社の熊谷組が補修などの応急措置をしてきたがマンションの傾斜が激しくなった。住民側の要請で行われた住友不動産の調査で14年6月、全5棟のうち4棟で、基礎杭の一部が支持層と呼ばれる固い地盤に到達していなかったことが判明した。
住友不動産と熊谷組は15年6月、傾斜している1棟は建て替え、4棟は補修することを住民側に提案した。傾斜している1棟から住民はすでに退去している。
2年近くにわたってもめたのは、両社の補修で済ませるという提案を住民側が受け入れなかったためだ。
だが今年2月の再調査で、残る棟の基礎部分で23カ所の鉄筋切断や、別の23カ所で補強鉄筋が入っていない疑いがあることが判明した。これで両社は非を認めて、全棟建て替えを提案したというのが経緯である。
ここにきて住友不動産と熊谷組が全棟建て替えに方針を転換したのは、三井不動産レジデンシャルが販売し15年10月にデータ改ざんが発覚した横浜市都筑区の“傾斜マンション” 「パークシティLaLa横浜」の解決策が影響した。三井不動産レジデンシャルは、傾斜した1棟の建て替えではなく全4棟の建て替え案を住民側に提示し、2月27日に建て替え方針が了承された。
三井不動産レジデンシャルと住友不動産は、傾斜したマンションだけでなく同じ敷地で分譲した全棟の建て替えを決めた。これで、今後このような施工不良が明らかになった場合には「全棟建て替え」が解決策として定着していくだろう。
マンションを施工するゼネコンにとって、全棟建て替えは恐怖以外の何物でもない。