NEW
江川紹子の「事件ウオッチ」第52回

赤枝氏「女の子はキャバクラ」発言に透ける、自己責任論と蔑ろにされる「教育の機会均等」

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
赤枝氏による「進学しても女の子はキャバクラに行く」との発言には、与野党から批判の声が上がったがーー。(写真は「赤枝恒雄公式サイト」より)

 熊本の大地震のように深刻で影響が甚大な出来事が起きると、世の中の関心もメディアの力の入れようもそこに集中するため、その前に提起された問題は深追いされないまま忘れ去られてしまいがちだ。赤枝恒雄衆議院議員による「親に言われて仕方なく進学しても、女の子はキャバクラへ行く」発言も、そんな事象のひとつではないか。

“女性蔑視”よりも問題な赤枝発言

 この発言があったのは、4月12日に開かれた超党派の「子どもの貧困対策推進議員連盟」の会合。翌日付の朝日新聞が大きく報じ、テレビなどでも取り上げられたが、14日未明の大地震でメディアから消え去った。報道が地震に集中するのはやむを得ないが、この発言は、子どもの貧困対策や教育機会の平等という喫緊かつ重要な課題にかかわる問題でもあり、忘れ去られないようここで一度蒸し返しておきたい。

 赤枝氏は、貧困家庭の支援団体の代表や児童養護施設出身の大学生が奨学金制度の拡充を求めたのに対して、質疑応答の冒頭で「がっかりした」と述べて、次のような趣旨の発言をした。

・高校や大学は、本人が自立してがんばらないといけない
・中途半端な気持ちで、15歳になったら高校に行けるというのはとんでもない
・親が行けというので仕方なく通信制高校に行ってもダメ。女の子はキャバクラに行ったり、望まない妊娠をして“できちゃった婚”をしてはすぐ離婚して、貧困の原因になる
・義務教育をしっかりやれば貧困はない。それほど義務教育は大事

 朝日の記事によれば、赤枝氏は会合の後の取材に「子どもが十分教育を終えるまでは国が手厚く援助しないといけないが、高校も大学もみんなが援助するのは間違っている」と述べたという。

 要するに赤枝氏の主張は、「義務教育をしっかりやりさえすれば子どもの貧困問題は解決する」「高校以上は自分の責任で」ということに尽きるだろう。

「キャバクラ」という刺激的な言葉が飛び出したこともあり、女性蔑視発言として扱われ、与党からも“不適切な表現”として批判はあったが、それはかなり的外れだ。発言の問題性は、むしろこの主張の根幹部分にある。

 赤枝氏は医師で、東京・六本木に開設した産婦人科の診療所で診療活動を行い、AIDSの街角無料診断を積極的に行うなど、女性の体や性の問題に長年かかわってきた。そういうなかで、親の意向でイヤイヤ進学をしたけれど高校に馴染めず、家を飛び出してキャバクラで働いたり、望まない妊娠をした女性を少なからず見てきたのだろう。この状況をなんとかしたい、という赤枝氏の善意に嘘はないと思う。

 残念なのは、そうした自分の経験を一般化してしまったことだ。本当は、進学した高校に馴染めなかった人のその後はもっと多様なはずなのに、自分が見聞きしたことがすべてであるかのように論じてしまう。自身のやってきたことや実績に自信がある人ほど、陥りやすい間違いといえるかもしれない。

義務教育で貧困問題は解決しない

 いくら実績がある人でも、個人でできる経験は限られている。その自覚がないと、他人の話を謙虚に聞いて、そこから何かを学ぶということができない。むしろ、持論を掲げて上から目線で相手に説教をしてしまう。

 高校・大学での奨学金の問題についての訴えを、赤枝氏は「高校や大学の話をいろいろ言うより、まずは義務教育を考えてください」と退けた。言外に「甘えるんじゃない」というニュアンスが漂い、「自己責任」との言葉を彷彿とする。若い人たちが困窮している事柄に対するそうした態度は、最近、妻から愛人や隠し子の問題を暴露された山田宏・前杉並区長が、「保育園落ちた」ブログについて、「落書き」「生んだのはあなたでしょう」「親の責任でしょ、まずは」と非難していたのと似ている。ちなみに、山田氏は今夏の参院選に自民党から立候補予定という。

 このような対応をしてしまうのは、さまざまな問題を抱える当事者や支援者などからの陳情や提案を受け、社会で解決すべき課題を立法の場で対応していく、という役割を期待されている国会議員の資質として致命的といえるのではないか。

赤枝氏「女の子はキャバクラ」発言に透ける、自己責任論と蔑ろにされる「教育の機会均等」のページです。ビジネスジャーナルは、連載、子どもの貧困格差社会赤枝恒雄の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!