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高橋篤史「経済禁忌録」

エリート日銀OB、私利私欲にまみれた金銭スキャンダルの全貌…振興銀破綻の裏で蓄財

文=高橋篤史/ジャーナリスト
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エリート日銀OB、私利私欲にまみれた金銭スキャンダルの全貌…振興銀破綻の裏で蓄財の画像1日本銀行(撮影=編集部)

 旧日本振興銀行の経営破綻をめぐる民事訴訟で、東京地裁は5月19日、木村剛元会長(53歳)に対し5億円の損害賠償を命じる判決を下した。裁判は破綻処理に入った整理回収機構(RCC)が関与者責任を問うため2012年8月に起こしたもの。一審判決が出るまでじつに4年近くかかったが、請求額のすべてが裁判所によって認められたかたちだ。

 日本銀行出身の著名金融コンサルタントだった木村元会長が率いる振興銀が、約6000億円の預金を抱え破綻したのは10年9月。日本で初めてペイオフが発動され、ごく一部ではあるものの預金者の虎の子がカットされるという前代未聞の事態となった。同行をめぐってはそれ以前から乱脈経営が指摘されており、同年6月の強制捜査を経て翌月には木村元会長ら経営幹部5人が金融庁の検査を妨害した銀行法違反の容疑で逮捕されていた。木村元会長には12年3月に懲役1年執行猶予3年の有罪判決が下っている。

 当時、振興銀事件はあまりの乱脈ぶりや結果の重大性から特別背任などもっと大きな金融スキャンダルに発展するかとも思われ、実際、木村元会長の勾留期間は半年以上の長期に及んだ。しかしその後の捜査は尻すぼみとなり、結局、メールを消したことで検査を妨害したという、見方によっては形式的な微罪事件で幕を下ろしてしまった。

 そうしたなか、破綻処理に入ったRCCや預金保険機構(預保)はなおも事件の解明に執念を燃やした。そして11年8月、旧SFCGからの無謀かつ巨額のローン債権買い取りをめぐり木村元会長はじめ旧経営陣らに50億円の損害賠償などを求める訴訟(第1訴訟、現在も係属中)を提起。さらに翌年8月には親密企業への杜撰な融資の責任を追及するため、今回判決が下された第2訴訟を提起するに至った。
 
 そして、じつのところ、それら民事訴訟のほうが先の刑事手続きよりむしろ振興銀をめぐるスキャンダルの真相や本質をあぶり出すことに成功したといえるのである。第1訴訟と第2訴訟を通じて浮かび上がったのは、経営破綻直前のどさくさに紛れて行われたどす黒い融資と、それに続く木村元会長周辺の不審なカネの動きだった。

乱脈融資

 具体的にはこういうことだ。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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