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10年3月、振興銀は親密企業の中小企業保証機構(SMEG)に対し85億円の融資を実行していた。当時、振興銀の周辺には中小企業振興ネットワークと呼ぶ親密企業数十社が存在し、振興銀とそれらの間では極めて複雑な出融資関係が幾重にも折り重なっていた。たとえば、振興銀から大量の融資を受けていたSMEGの大口融資先のひとつは、中小企業振興ネットワーク入りしていたインデックス・ホールディングスを率いた落合正美元会長(14年5月に粉飾決算事件で逮捕、公判手続き中)であり、その落合元会長は担保に差し入れていたインデックス株が将来値上がりするとの前提で株式譲渡予約契約を結びSMEGから予約保証金も受け取っていた。
SMEGに実行された85億円融資で何よりも問題だったのはその時期だ。当時、振興銀をめぐっては前年6月から始まっていた金融庁検査が佳境を迎えていた。融資の半月前にあたる2月26日、振興銀は金融庁から大口融資先のSMEGに関する確認表を交付されていたが、そこでは同社が債務超過と認定され破綻懸念先に分類すべきとされていた。さらに3月2日、振興銀本体についての確認表も交付される。そこでは同行が前年3月末でじつに561億円もの債務超過に陥っていると認定されていたのである。
すでにその時点でSMEGや振興銀の破綻状態は明らかだったわけだが、木村元会長によるワンマン経営の下、経営陣は85億円もの多額融資を急いだ。取締役会が融資を承認したのは3月1日。同月11日には極度額85億円の特殊当座借越契約を結び、翌12日、85億円の融資は実行された。10億円については担保によるカバーもなく丸裸だった。
隠し口座に資金をプール
それだけでも異常だが、さらにおかしなことが起きていた。木村元会長が保有する振興銀株950株をSMEGに対し譲渡する話が同時並行で進んでいたのである。
木村元会長が譲渡の承諾書を提出したのは3月2日。それを受け、取締役会は同月8日に譲渡を承認している。譲渡価格は1株33万5000円。添付された前年11月30日付の株価算定書はあまりにも現実離れしたものだった。5年後に振興銀の貸出金がほぼ3倍に伸び、経常利益が4倍以上に跳ね上がるとの収益計画が前提条件だったからだ。株の譲渡が完了したのは、SMEGが振興銀から85億円の融資を受けた7日後の3月19日。その日、SMEGは木村元会長の銀行口座に3億1825万円を送金している。
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